スキルアップトピックス

「すぐダメ出し」「1対1の密室」は時代遅れ? 部下への「古いフィードバック」4つの具体例

部下の成長を願う「耳の痛い」フィードバック。でも、そのやり方、実は逆効果かも? 従来の常識を覆す、部下の可能性を引き出す新しいフィードバックの4つのポイントを、組織づくりのプロが徹底解説!

執筆者:All About 編集部

「部下の成長のために」が逆効果になっているかも!?

「部下の成長のために」が逆効果になっているかも!?

「部下のためを思って、あえて厳しいことも言っているのに……」そのフィードバック、本当に部下に届いていますか? 良かれと思って伝えている「耳の痛い言葉」が、実は部下の成長を妨げているかもしれません。

新しい組織・キャリア論を探求する、安斎勇樹さんの著書『冒険する組織のつくりかた──「軍事的世界観」を抜け出す5つの思考法』では、従来のフィードバックの問題点を指摘し、部下の可能性を最大限に引き出す新しいアプローチを提唱しています。

今回は本書から一部抜粋し、「過去の行動修正」を目的とした古いフィードバック観から脱却し、「新しい可能性の提案」を目指すフィードバックの新常識について、4つのポイントを紹介します。
<目次>

古いフィードバック観から脱却する! 4つのポイント

「過去の行動の修正」から「新しい可能性の提案」へと目的が変わると、それに伴ってフィードバックにおける「常識」もまたすべてひっくり返ります。

そのポイントをいくつか見ておきましょう。

【新常識①】「その場ですぐ」から「適切なタイミング」へ

軍事的世界観においては、部下にエラー行動が見られたら、直後にフィードバックして修正すべきだとされてきました。

いわゆる“パブロフの犬”で知られる行動主義的な条件反射の原理がそうであるように、賞罰によって動物の行動をコントロールするときには「できるかぎり早く」「繰り返し」が鉄則です。

一方、相手の可能性を提案したいのであれば、フィードバックは必ずしも即座に行われる必要はありません。

相手がなにか新しい目標を設定しようとしていたり、壁に行き詰まって視野が狭くなっていたりするときなど、しかるべきタイミングを見計らってコミュニケーションをとるほうが効果的な場合もあります。

本人のリフレクションのための時間も考えると、むしろ「直後」は避けるべきかもしれません。

【新常識②】「密室」から「オープン」へ

軍事的フィードバックは、上司と部下の「閉じられた関係性」のなかで行われます。

フィードバックの内容は基本的に“ダメ出し”であり、部下はほかのメンバーに聞かれることを望みません。

そのため実務的にも、「1対1の密室」でこっそり行うことが推奨されてきました。

他方で、「あなたにはこんなこともできるかもしれない」と前向きな可能性を提案するのであれば、わざわざ密室である必要はありませんし、2人きりでなくてもかまいません。

内容によってはむしろ、ほかのメンバーにも共有されていたほうが、チームづくりの観点でプラスになるケースすらあるでしょう。

【新常識③】「耳の痛い言葉」から「目を開かせる言葉」へ

部下に「正しい行動」をとらせることが、軍事的組織における上司の役割です。

そのためには、範となる行動を自ら“背中で語る”だけでなく、実際に「こういう行動をとるべきだ」「その行動は間違っている」ということを明示的に伝えなければなりません。

そのなかには、部下にとって都合の悪い事実や指摘されたくない欠点なども含まれているでしょう。

それゆえ、フィードバックとは「部下にとって“耳の痛いこと”」を伝える行為だとされてきました。

また、そうだからこそ、「まずは相手の話を傾聴しよう」とか「最初にポジティブな話題から入り、そのあとにネガティブなことを伝えよう」といったテクニック論にスポットが当たり、それに終始しがちだったと言えます。

一方、冒険的世界観のフィードバックでは、相手の「ものの見方」を広げる言葉を大切にします。

会社や上司にとって都合がいいように行動をコントロールするのではなく、部下のなかで未来の選択肢や想像が広がっていくようにするのです。

といっても、これは「冒険する組織では“耳の痛いこと”を言うべきではない」ということではありません。

相手の目を開かせるような言葉をかけた結果、ひょっとするとその人が「見ないようにしていた不都合な部分」が視界に入ってきて、結果的にその人が耳の痛い思いをする可能性はあるからです。

ここでの力点はあくまでも、「“耳の痛いこと”を通じた行動改善を目的にしない」というところにあります。

【新常識④】「一方向的コマンド」から「双方向的ギフト」へ

軍事的組織におけるフィードバック権限は、上司に独占されています。

この背景には、“正解”を持っているのはあくまでも上司であり、それに基づいて部下の行動を「答え合わせ」すれば組織がうまくいくという発想があります。

こうした一方向的なフィードバックの“OS”を持った組織で、いわゆる「360度フィードバック」や「360度評価システム」などの“アプリケーション”を導入してもうまくいかないのは当然です。

一方、冒険する組織でのフィードバックは、共に冒険をしている仲間の可能性を提示するコミュニケーション全般を指します。

また、それゆえに権限も役職も関係ありません。

フィードバックは、いわば「お互いの学びのために贈り合うギフト」のようなものです。

「部下から上司へ」はもちろん、チーム外のメンバー同士であっても、日頃からどんどんフィードバックし合うことが推奨されます。
  安斎 勇樹(あんざい・ゆうき)プロフィール
株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO。1985年生まれ。東京都出身。東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。組織づくりを得意領域とする経営コンサルティングファーム「MIMIGURI(ミミグリ)」を創業。資生堂、シチズン、京セラ、三菱電機、キッコーマン、竹中工務店、東急などの大企業から、マネーフォワード、SmartHR、ANYCOLORなどのベンチャー企業に至るまで、計350社以上の組織づくりを支援。
ウェブメディア「CULTIBASE」編集長。東京大学大学院 情報学環 客員研究員。
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