
マンションは立地が全てって本当?
マンションは「立地が全て」はホント?
マンションの資産価値は「立地が全て」という人がいます。多少物件に難があっても、立地がよければ資産価値は上がり、さらに物件の条件も揃っていれば、これはもう無敵というわけです。では立地とは何を指すのでしょうか。最もいいのは、都心の駅前、駅近立地です。首都圏で見ても、東京23区の都心であれば、物件の選択さえ間違えなければ、大きなキャピタルゲインを得ることができます。
実際、どれくらいの価格上昇が期待できるのでしょうか。各種マンション情報の「マンションレビュー」を運営するワンノブアカインドでは、定期的に全国市区町村別の中古マンション70㎡換算価格のランキングと共に、1年前、3年前、5年前、10年前との騰落率(上昇率)を調査して、結果を公表しています。これの最新結果(2025年3月)をもとに、マンション価格の傾向とあわせて見ていきましょう。
都心5区、6区がマンション70㎡価格の上位を独占
まず、市区町村別の70㎡換算価格のランキングのトップは、東京都港区で、2025年3月の中古マンション価格は1億9971万円でした。億ションどころか2億ションも射程に入る金額です。東京都港区に続くのは東京都千代田区の1億5070万円で、3位は東京都中央区の1億4490万円、4位が東京都渋谷区の1億4356万円です。1億円超えはここまでで、5位の東京都目黒区は9354万円でした。
上位の顔ぶれを見ると、12位までは東京23区が占め、13位に初めて神奈川県川崎市中原区が入ってきます。中原区は、タワーマンションのメッカとなりつつある武蔵小杉があります。最近は神奈川県でも、横浜市の各区をしのぐ価格レベルになっています。【全国市区町村中古マンション(70㎡換算価格)ランキング】
1位:東京都港区(1億9971万円)
2位:東京都千代田区(1億5070万円)
3位:東京都中央区(1億4490万円)
4位:東京都渋谷区1億4356万円
5位:東京都目黒区(9354万円)
6位:東京都新宿区(9276万円)
7位:東京都文京区(8875万円)
8位:東京都品川区(8773万円)
9位:東京都江東区(8574万円)
10位:東京都台東区(7559万円)
引用:プレスリリース|「マンションレビュー」2025年3月 全国市区町村中古マンション価格/騰落率ランキングデータ集|マンションレビュー
なかでも注目しておきたいのは、都心の各区が70㎡換算価格ランキングの上位に並んでいるという点です。一般的には、千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区が都心5区と言われ、まれに文京区を加えて都心6区という言い方もなされます。その都心5区、都心6区が70㎡換算価格の上位を独占しているのです。
東京都港区はなんと1年前に比べて75.15%もアップ
しかも、都心の各区は現在の価格が高い上に、価格騰落率も高いのが特徴です。図表1をご覧ください。これは、1年前の価格に対する騰落率のトップ10を左から並べ、それぞれの70㎡換算価格を示したものです。【図表1:全国市区町村中古マンション価格を1年前と比較した際の上昇率トップ10(左から)】

図表1:全国市区町村中古マンション価格を1年前と比較した際の上昇率トップ10(出典をもとに筆者作成)
上昇率の2位は東京都渋谷区の47.51%、3位が東京都江東区の42.96%で、さらに東京都中央区、東京都千代田区などが続いています。
やはり、資産価値の上昇を期待するのであれば、都心の各区のマンションを購入するのが最も確実ですが、残念ながら都心の各区のマンションは億ションが中心で、簡単には手が届かないという人も多いのではないでしょうか。
都心周辺の各区や大阪市、名古屋市にも注目
手頃な価格帯の物件を希望するのであれば、東京23区でも、都心周辺で、比較的リーズナブルな価格帯で購入可能なエリアに注目してみましょう。例えば、東京都江東区なら70㎡換算価格は8574万円で、1年前との騰落率は42.96%と高い上昇率になっています。もう少し安い物件をというのであれば、東京都を離れて大阪府や愛知県などの大都市部に目を向けてはどうでしょうか。大阪府大阪市の北区、西区、中央区なら価格4000万円台から5000万円台で、1年前との騰落率は30%前後です。大阪府はインバウンドが多く、2025年は大阪・関西万博で全国的だけではなく、世界的にも注目度が高まっています。またJR大阪駅では、大規模な再開発が進行しており、大阪市全体の相場を押し上げています。
首都圏住まいの人でも、二拠点居住の住まいとして購入、自身が使わないときには民泊として活用する手なども考えられるのではないでしょうか。
なお、1年前との騰落率で6位に新潟県南魚沼郡湯沢町が上がっていますが、これは価格水準が低すぎるため騰落率が高くなっているだけであり、あまり参考になりません。遊んでいるお金があって、うまくいけばめっけもの、最悪下落しても仕方ないと割り切れる人でないとお勧めできません。
資産価値の傾向は、中長期的な視点でもチェック
ただし、1年前との比較だけでは、一時的な要因に左右される可能性があるので、中長期的な視点も欠かせません。そこで図表2をご覧ください。こちらは10年前と比べての騰落率のトップ10を左から並べたものです。【図表2:全国市区町村中古マンション価格を10年前と比較した際の上昇率トップ10(左から)】

図表2:全国市区町村中古マンション価格を10年前と比較した際の上昇率トップ10(出典をもとに筆者作成)
2位は東京都中央区で、3位は東京都渋谷区など、やはり東京の都心部が強いのですが、ここでも、大阪府大阪市の各区がベスト10に3区入っています。8位の東京都江東区までは騰落率100%以上なので、10年で2倍以上の資産価値になった計算です。
いずれにしても、マンション購入で資産価値の向上を狙うのであれば、何より東京の都心各区が一番ですが、価格的に無理がある場合の次善の策として、大阪や名古屋、もしくは福岡などの中心部ということになるのではないでしょうか。東京以外で大きな価格上昇が期待できるのは、やはり大都市部の中心部なのです。
出典・引用『プレスリリース|「マンションレビュー」2025年3月 全国市区町村中古マンション価格/騰落率ランキングデータ集|マンションレビュー』
文:山下 和之
住宅・不動産ジャーナリスト。新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトなどでの執筆・取材、セミナー講演、メディア出演など幅広く活動。著書に『よくわかる不動産業界』『「家を買う。」その前に知っておきたいこと』(いずれも日本実業出版社)、『マイホーム購入 トクする資金プランと税金対策』(学研プラス)、『2017-2018年度版 住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)など。