人間関係

「新入社員の時、セクハラされた」と暴露した40代同僚にモヤモヤ「20年近く前の話を……」

セクハラ、モラハラなどのハラスメントに対し、女性たちが声を上げる事例が増えている。声を上げることで、新たなよりよい時代へと変化していく期待感もある。だが一方で、現在の流れにモヤモヤしている人たちもいるのだ。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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セクハラ、モラハラに声を上げる女性たちが増えているが

セクハラ、モラハラに声を上げる女性たちが増えているが

ほんの一昔前まで、「誰かに傷つけられた」気持ちは、男女問わず、自分でうまく処理するしかないと思われていた。例えばセクハラやモラハラ。だが今は声を上げるべきだという考え方が主流だろう。セクハラ、モラハラを受けるのは、社会的構造に起因する力関係により、どうしても女性が多くなるのはやむを得ない。そして女性たちが声を上げることで、職場や夫婦関係などがよりよく変わっていくはずだという期待感もある。

それでも……なんだか今のありように「モヤモヤする」という女性たちも少なくない。

上司のセクハラを暴露した後輩

「昨年、同期の男性がセクハラで処分を受けました。20代の女性社員が内部告発したんです。残業している同僚を排除した上で、同期はその若い女性社員に無理矢理迫っていたという。彼女がある時その様子を携帯で録画していたので、もう一発アウト。女性たちの間からは『よくやった』という声が出ています。同期としては、『あの人、そんな人だっけ』と思うところもあったけど、やったことはやったこと。罰を受けるのは仕方がない」

アユコさん(44歳)は顔をしかめながらそう言った。入社して20年、当時の同期は仲がよかったため、今もいる同期数人はみんな動揺しているという。

「結局、彼は退職しました。それを機に社内をもっと風通しよくしようという活動も活発になった。40代以降の男性社員たちはみんな戦々恐々としていたようです。そんなとき、私たちと同世代の女性たちも声を上げるようになった。それ自体は悪いことではないと思うんですが」

フラれたことを根に持っている?

アユコさんがモヤモヤするのは、同期女性が「新入社員の時、私は3年上の先輩にセクハラされた」と主張している案件。

アユコさんはその彼女と親しく、当時のことをはっきりと記憶しているのだが、彼女はその先輩男性に一方的に片思いをしていた。そして思いが高じて告白したが、結局フラれたという経緯がある。

「フラれたけど、最後に酔ったふりをして彼に抱きついてキスしたと、彼女は当時言っていたんです。男性側に振り払われたらしいですけど。その一件を今になって持ち出して、先輩にセクハラされたって……完全にうそだろう、と。彼女はフラれたことを今も根に持っているんでしょうね。

『告発なんてやめた方がいい』と私は彼女に言いました。その先輩というのが、今現在の私の直の上司でもあるのですが、若干、軽めの性格ではあるけれど情に厚くて私たちは信頼している。彼女が変なことを言って、人事に影響が出るとかえって会社のためにはならないから」

ただ、彼女の主張は違っていた。

あなたは分かってない

彼女が言うには、「あの時は私の片思いだと言ったけど、実際はそうではなく、付き合っていた」のだそう。そして彼女が彼を振ったのだが、その後、セクハラされるようになったというのだ。付き合っていることはアユコさんにはもちろん、誰にも話してこなかった、と。

「なんだか事実がねじ曲げられているような気がしてならないけど、彼女自身が誰にも言ってこなかった事実だと言い張ると、そういうものかと思ってしまう人もいる。だけど20年近く前の話を蒸し返されてもなあ、というのが周りの正直な感想なんですよね」

本当にひどいセクハラがあり、それによって彼女が精神的に傷ついたのなら、たとえ20年前でも問題にはなるだろう。今も当事者二人が同じ会社にいるのだから。だが、アユコさんには「なんとなく気運に乗って、つい言ってしまったようにしか見えない」のだという。

「会社は調査に乗り出したみたいですが、先輩本人がほとんど覚えていないという。周りからも証言が得られず、結局、彼女は黙り込むしかなくなった。でも内々では、『本当にセクハラだったのに』と触れ回っています。

彼の方はとりあえず反省しているという文書を提出したらしいですが、濡れ衣なんじゃないかという声も多くて」

「風通しがいい」社風とは?

それ以降、社内の雰囲気が悪くなっているらしい。もともと小さな会社だし、アットホームで気軽に声をかけ合うような社風なのに、男性たちは萎縮し、それによって男女間も世代間もぎくしゃくするようになってしまったという。

「そんな昔のことをあげつらって誰かを責める風潮が、『風通しがいい』ということではないと思うんです。ここからどうしていくかの方がずっと重要なのではないか、と。そう言うと、『じゃあ、つらい目にあったけど言えなかった人が、今、告発してはいけないのか』と言われる。もちろん、内容によるとは思うし、今になったから言えることもあるかもしれない。ただ、それが延々続いたら、社内の雰囲気は悪くなるばかりですよね。今と未来を考えた方がいい。私はその立場です」

社内でも意見は分かれているというが、そういった意見交換ができるだけでもすごいと他社に勤める女友達には言われた。

「確かにそうかもしれないけど、とにかく価値観ががらっと変わりつつある時代なんだと感じさせられますね」

アユコさんは言葉を選びつつそうつぶやいた。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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