今回は「免許返納のルールはどのように定めるべきか?」という設問に寄せられた回答を紹介。そこから見えてきたのは、返納の必要性とそれを阻む「現実的な壁」であった。
年齢制限? 能力検査? 返納を巡る「線引き」
免許返納のルールについて、特に多く寄せられたのが「年齢による区切り」を求める声であった。一方、年齢で定めるのではなく、より厳しく運転スキルのチェックを行うべきといった意見も多かった。「80歳で強制返納など、数値できちっと定めたらいいと思う」(20代・男性)
「ある程度年齢で定めてほしい。80歳を超えて新車を買えるような制度は本当に危険だと思う」(20代・女性)
「反応や判断のバラつきがあるからこそ、年齢で区切るのが合理的だと思う」(40代・男性)
「一定の年齢に達したら強制的に返納させるべき」(50代・男性)
「地域の実情に応じて返納を促す年齢や、無条件で返納を求める年齢を定めておくべき」(30代・女性)
「免許更新のたびにドライビングスクールで能力を確認し、合格しなければ返納か教習通いを促す制度が必要」(30代・女性)
「70歳以上は難易度の高い試験をクリアしなければ運転継続できない仕組みにしてほしい」(40代・男性)
「半年に一度の運転技能と知能検査を実施すべき」(20代・女性)
「現行の高齢者講習は甘すぎる。不合格者には即時の免許剥奪が必要」(30代・男性)
「集中力・反射神経・運動能力・記憶力といった項目について、より厳密な測定を行うべきだ。80代でもしっかりしている人がいる一方で、60代でも注意力が散漫なケースもある」(60代・男性)
返納は「生活の断絶」? 地方から上がる切実な声
返納ルールを設けることに賛成する人の中でも、その前提として移動手段の確保が不可欠であるとの声が多く聞かれた。また地方の実情から「免許返納=生活の危機」という声も相次いだ。「生活に支障がないよう、タクシーや電車・バスの割引サービスを行うなど、日常生活に影響が出ない優遇策が必要だと考える」(30代・男性)
「免許を返納するなら、タクシー乗り放題券のような代替手段を提供すべき」(40代・女性)
「車がないと生活できない高齢者も多く、そうした家庭にはタクシー券などの配慮が必要だ」(30代・女性)
「国や自治体が補助し、高齢者がほぼ無料でタクシーを使えるサービスを拡充すべきだ」(40代女性/栃木県)
これらの意見からは、高齢者の免許返納が「地域の暮らしの設計」そのものに関わる問題であることが見えてくる。「田舎で暮らしていると車がなければ生活が成り立たない。まず交通インフラを整備してから制度を定めてほしい」(40代・女性)
「過疎地域では買い物や通院に車が必要。バスやタクシーの利用を無料にするなど、自由に使える制度設計が必要だ」(30代・女性)
「ネットスーパーもなく、バス停まで30分以上歩く地域では車を手放すことは難しい」(60代・女性)
「公共交通のダイヤ減少により、買い物すら困難。地方の実情を無視したルールは非現実的だ」(30代・女性)
高齢者ドライバーの免許返納ルールは、単なる「安全管理」の話ではない。「地域」「生活」「尊厳」「公平」といった価値観が複雑に絡み合っており、単純に年齢で線引きをするだけでは解決にならなそうだ。今求められているのは、生活インフラの整備と一体となった柔軟で実効的な制度設計ではないだろうか。
<調査概要>
調査方法:インターネットアンケート
調査期間:2025年3月12日~2025年3月26日
調査対象:121人(男性:48、女性:73)
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