アルツハイマー病は40代後半で始まっている!?

“ボケ”というと真っ先に頭に浮かぶのが、「認知症」というワード。一般的には、認知症が発症するのは65歳以上であるケースがほとんどなので、「まだ早いだろう」と思う方も多いかもしれません。ところが、認知症の原因の約70%を占める「アルツハイマー病」は、40代後半の半数の人において、その初期段階が始まっているという報告があります。アルツハイマー病は、発症まで20~30年もの年月をかけてひっそりと進行する病気なので、40~50代は“隠れ認知症世代”ともいえるでしょう。
そもそも、高齢化社会の現在において、認知症の人数は増加の一途をたどっています。厚生労働省によると、2030年には、認知症の患者数は推定523万人に達し、認知機能レベルが実年齢より低下している“予備軍”は593万人に達するとの報告があります。予備軍を含めると、実に1,100万人が認知症にかかるリスクがあるということ。今や大きな社会問題となった認知症は、決して他人ごとではありません。
では、解決策はないのでしょうか?
今のところ、認知症の確立された予防法や治療法はありませんが、世界中で様々な研究が進行中です。そんななかで、ある意外な薬がアルツハイマー病に効果がある可能性が指摘され、注目を集めています。それが、ED治療薬です。
ED治療薬に期待される脳への血流増加
言わずもがな、ED治療薬とは、ED(勃起不全)治療に効果・効能のある薬のこと。ED治療薬とアルツハイマー病の関係を理解するために、まずは勃起のメカニズムについて解説しましょう。男性へ何らかの性的刺激が与えられたとき、脳の中枢神経が興奮し、その興奮が脊髄神経を通って陰茎に伝わります。そして、体内で一酸化窒素が分泌され、これが勃起のGOサインとなります。
一酸化炭素が分泌されると、局部の細胞内に「サイクリックGMP」という物質が増加します。この物質はいわば、体内で産生される自然の血管拡張剤のようなもの。増えることで陰茎内の血管が拡張され、海綿体の平滑筋が緩み、通常よりも多くの血液が流入します。血液の圧力によって海綿体が硬くなり、その結果、勃起という現象が起こるのです。
一方で、海綿体には、サイクリックGMPを分解し、その働きを抑える「PDE5」という酵素も豊富に存在しています。射精後に勃起が鎮まるのは、PDE5が働いてくれているおかげといえるでしょう。ところが、性交時にPDE5が増えすぎてしまうと、勃起が妨げられてEDにつながってしまいます。このPDE5の働きを抑えることでサイクリックGMPを増やし、勃起しやすい状態に導くのが、ED治療薬なのです。

世界で実施された、ED治療薬とアルツハイマー病の様々な研究

アメリカ国立衛生研究所の傘下である米国立老化研究所の支援のもと、2021年に行われた研究では、糖尿病や高血圧を患う患者700万人以上のデータを元に、バイアグラの服用者と非服用者を比較しました。6年間の追跡調査の結果、バイアグラを服用していた人は、アルツハイマー病を発症する可能性が69%低いことが明らかになりました。

このように、各国で様々な研究が進められているものの、ED治療薬がアルツハイマー病にどのように作用するかは、今のところ正確には解明されていません。先ほどお話したように、ED治療薬による脳への血流増加が功を奏している可能性もありますし、別の報告では、アルツハイマー病の原因となるアミロイドβやタウタンパク質の蓄積を抑制する作用がある可能性も指摘されています。
いずれにせよ、すでに医薬品として承認されているED治療薬にアルツハイマー病の予防や治療効果が実証されれば、短期間で認知症の薬として認可されるのではないでしょうか。高齢化に拍車がかかる今、さらなる研究が待ち望まれます。
ED治療薬の秘めたるポテンシャルに注目しよう

この連載を通じて何度がお伝えしていることではありますが、ED治療薬は、正しく服用すれば、毎日飲んだとしても安全性に問題はありません。もし、セックスに肉体的な不安を感じているのであれば、医師の診断のもと、病院でED治療薬を処方してもらうのもおすすめです。性生活が充実すれば健康や精神面にもポジティブな相乗効果が生まれ、ひょっとしたら、アルツハイマー病予防にもつながるかもしれませんよ。
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※参考:
バイアグラによるアルツハイマー病予防及び治療の可能性(浜松町第一クリニック)
https://www.hama1-cl.jp/column/viagra_alzheimer.html
ED治療薬に「アルツハイマー病」の予防効果、脳の血流増加で
https://forbesjapan.com/articles/detail/69038