亀山早苗の恋愛コラム

「嘘をつく男」とは別れるべき? 許せる嘘、許せない嘘、男女関係における「究極の嘘」とは

男女関係において、嘘をつく男性は一定数いる。彼らはさまざまな理由で、さまざまな嘘をつく。単なる保身の場合もあれば、相手のためにつく「優しい嘘」もあるだろう。だが、嘘は嘘。許せるかどうかはその人次第だ。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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出会ったときはだまされるなんて思っていなかった……

出会ったときはだまされるなんて思っていなかった……

相手のことを知りたいと思うところから恋は始まる。もっと知りたい、もっと会いたいが加速していくのが恋の楽しいところでもあり、不安なところでもあるだろう。その過程で、相手が何かをごまかしている、嘘をついているかもしれないと思ったらどうすればいいのか。距離を詰めるか、距離をキープしたまま探るのか、あるいはいったん引くのか。それは相手との関係、自らのキャラクターなどが関わってくるのかもしれない。

嘘の内容にもよるのかも

嘘はいけない。多くの人はそう思っている。もちろん、他人を裏切り真実をねじ曲げる嘘は論外としても、人によっては自分を大きく見せて相手の関心を引きたいための嘘をつくこともある。

「昔知り合った男性がそうでした。勤務している会社名は間違っていなかったけど、彼は臨時雇いのアルバイト。あたかも大企業のエリートのようにふるまっていた。私、たまたまその会社に学生時代の友人が勤めていたので、付き合うことになりそうなときに調べてもらったんですよ。そうしたらその部署にそんな人はいないって……」

カナさん(33歳)はそう言って苦笑した。次に会ったとき、彼から予想通り「付き合ってほしい」と言われ、「私も付き合いたいと思っていたけど、あなたのことが信じられないんだよね」と率直に答えた。「勤め先のこと、嘘ついてない?」とさらに言うと、彼は一瞬、目を泳がせたあと、いきなりガバッとテーブルに両手をついた。

「ごめんなさいって。どうしても私と付き合いたかったから、バイトなのに正社員のふりをした。ずっと本当のことを言おうとしていたけど嫌われそうで言えなかったと。ただ、彼は今、必死で仕事を探している、でも何でもいいわけじゃないんだといろいろ説明していました」

彼の嘘を許せなかった

彼の言い分に納得できるところもあったのだが、「私は正社員でいることを望んでいるわけじゃない。あなたがあなた自身を形成していると思われるプロフィールの面で嘘をついていたのが嫌だった」と別れを告げた。

「その2年後くらいだったか、共通の知り合いにばったり会ったら彼の話題が出てきて。『あなたたち、付き合うのかと思ってたけど、そうじゃなかったんだね。あの彼、家業を継いで社長になったよ』と。びっくりしました。実は彼、中堅ではあるけど優良企業の跡継ぎだったんです。当時は武者修行であちこちアルバイトに行っていたらしい。逃した獲物は大きかったと落ち込んだけど、考えてみたらそうやってバリアを張るような男でもあったわけで……。私が彼の嘘を許していたとしても、きっとどこかでひずみが出たとも考えられるなあと切り替えることができました」

それでもちょっと惜しかったけどとカナさんはつぶやいた。もし彼が「実はちょっと事情があって今はアルバイトをしている。でもやりたいことははっきりしている」と言ってくれれば事態は変わったはずだと彼女は感じているそうだ。

何もかも言えばいいというものではないけれど

最初からオープンな人もいれば、なかなか他人に心を開かない人もいる。そしてある程度大人になればなにもかも他人に話すとは限らない。

「過去も含めてオレの何もかも知ってほしいと、かつて付き合った女性の話を延々と聞かされたことがあります。過去の女性のことを聞くのはいいけど、その彼はずっと女性の悪口ばかり。私も付き合ってもし別れたら、こういう目にあうんだろうなと思うと、付き合う気をなくしました」

アスカさん(32歳)はため息をついた。つい最近、付き合おうと思った人とのエピソードだという。

「そもそも相手が嘘をついているなんて思いたくないですしね。でも私の姉は、相手の言うことを何もかも信じていたけど、結果、大嘘をつかれていたことがあったんです」

騙された姉

アスカさんの姉は数年前、その男性ととある飲食店で知り合った。女友達と気軽な洋食店で待ち合わせをしていたのだが、時間が過ぎても彼女が来ず、「親が急病で救急搬送された。ごめん、今日は行けない」と連絡があった。一人で食べるのもどうかと躊躇(ちゅうちょ)したが、おなかがすいていたので一人で食べることに。そのとき隣のテーブルにいた男性から声をかけられた。

「お一人ですかって。僕、一人ごはんなんですが、よかったら一緒にどうですか。その方がいろいろ頼めてシェアできるしと言われたんだそうです。姉も一人じゃ寂しいなと思っていたのでそれに乗った。見た目はすごく明るそうな会社員風だったし、食事だけだしと思ったとか。彼はすぐに名刺を出し、さらに運転免許証まで見せて、怪しい者じゃないとアピールしたそうです。姉は笑って気を許したみたい」

そこから姉と彼は付き合い始めた。彼は都内にマンションを持っており、彼女はそこに出入りするようにもなった。だが1年ほど付き合ったとき、彼が既婚だと分かったのだという。

「姉の落ち込みようは大変なものでした。私は姉から彼を紹介されていたし、とてもいいカップルだと思っていたので、怒り心頭でしたよ。彼に会いに行って文句を言ったあげく、ふざけるなと殴ってしまった。彼は何も言いませんでした」

男女関係における究極の嘘はこれかもしれない。こういう嘘は優しさからくる嘘ではない、ただの保身である。
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