歯・口の病気

子どもの口臭がひどい原因は? 「磨き残し」が起こる意外な理由と対処法

【歯科医が解説】【画像あり】子どもの口臭の原因のほとんどは、適切な歯磨きができてい「磨き残し」です。子どもの「お口の臭い」の改善に効果的な方法・対策法を、分かりやすく解説します。

野尻 真里

執筆者:野尻 真里

歯科医 / 歯の健康ガイド

子どもの口臭

子どもの口臭が気になる……改善することは可能?


子どもの口臭がひどくて、気になっている方はいませんか? 口臭の問題があっても、子ども自身ではなかなか気づけないもの。自分では分からないため、お友達に言われてけんかになってしまった……というお話も聞くことがあります。また、親から強く指摘すると、子どもの自尊心を傷つけてしまうことにもなりかねません。子どもの「お口の臭い」の原因と、改善するために有効な方法を、分かりやすく解説します。

<目次>  

子どもの口臭の原因は? 「磨き残し」がほとんど

大人の口臭の場合、原因はさまざまですが、子どもの口臭の原因のほとんどは「磨き残し」によるものです。口内の細菌は、飲食後、時間の経過と共にどんどん繁殖していきます。

皆さんも、朝食後に歯磨きをしたのに、お昼ご飯の前くらいになると、何となく口臭が気になっている、ということはないでしょうか? その場合、朝食後の「磨き残し」から、細菌が繁殖してしまったことが原因だと考えられます。

同様に、子どもの場合も「磨き残し」が口臭の原因になるのですが、特に子どもの歯磨きは大人以上に難しく、口臭につながりやすいのです。
 

大人以上に難しい「子どもの歯磨き」大人とは違う「子どもの口内」の特徴は?

子どもの歯

生え変わりの時期の子どもの歯


子どものお口の中は、実は非常に歯磨きがしづらい状態になっています。特に「生え変わり」の時期は、歯と歯に段差が生まれやすかったり、歯の丈が短かったりして、きれいにするのは大人でも難しいのです。

大人と同じ「永久歯」が生えても、安心はできません。実は生え立ての永久歯は、私たち大人の歯のような「すり減り」がないため、歯の溝が深く、ギザギザのはっきりした、複雑な形をしています。その分、大人よりも歯ブラシが当てづらい箇所が多いのです。

また、前歯の近くには、上唇と歯茎をつなぐ「小帯」という筋があります。子どもの場合、小帯が限りなく前歯の近くにくっついているため、歯ブラシがこの部分に当たりやすいです。小帯に痛みを感じたり、傷ついたりといったことが起こります。そのため、上の写真のように、歯と歯茎の間の磨き残しが起こりやすくなります。

こうした磨き残しによって、子どもの口臭が起こりやすくなるのです。
 

【実際の画像】子ども自身の歯磨き後、磨き残しはどれくらいあるのか

子どもの歯磨き後の染め出し

子ども自身での歯磨き後、染め出しを行った結果


こちらは、子ども自身で歯磨きをしてもらった後に、染め出し液で「磨き残しがどれくらいあるか」をチェックした際の画像です。

子どもの口臭の改善のためには、「歯磨きでお口の中の細菌を減らしていくこと」が一番なのですが、子どもだけでは十分な歯磨きが難しいことがお分かりいただけると思います。

前述の通り、子どもの口内や歯はきれいに磨くのが難しい状態です。それに子どもは、大人ほど器用に手指を動かせません。また、歯磨きに対する知識や関心も持ちづらく、歯磨きが「やりたくないこと」になってしまっていることも、珍しくありません。そのため、歯科医院に来院される子どもの患者さんには、多くの磨き残しが見られます。

歯科医院で一度しっかりと歯磨きの練習をすると、次回の来院ではきれいに磨けるお子さんがほとんどです。歯の健康を育むためにも、学びの場は必要なものだと感じます。

すぐに器用に磨けるようにならなくても、数カ月に一度のペースでも「歯磨き塾」に行くような感覚で、少しずつ歯磨きを練習していくことが大切です。

お父さんやお母さんの「仕上げ磨き」がなくなると、子どもだけで歯磨きをするようになります。乳幼児期だけの問題ではなく、親の知らないところでの間食なども始まる中学生に入る頃には、むし歯やなりやすく口臭の発生もしやすくなります。

小学校卒業までに正しい歯磨きを習得できることを目標としてもらうと、むし歯や歯肉炎、口臭のリスクが高まる時期もトラブルなく過ごせるのではないでしょうか。
 

大人でも十分きれいにするのは難しい歯磨き。仕上げ磨きのポイントは?

大人の歯磨き後の染め出し

大人にとっても難しい歯磨き。歯ブラシを動かしていても、歯の表面の汚れがほとんど取れていないケースも


子どもよりも磨きやすいはずの大人でも、歯磨きが苦手な人は珍しくありません。こちらの写真は、大人の方の歯の磨き残しの状況を、染め出し液でチェックしたときのものです。「ざっと素早く磨いたつもり」でも、歯ブラシの動かし方などのちょっとしたコツがつかめていないと、歯の汚れは落とせません。ご自身の歯磨きも難しいのに、子どもの歯をきれいに磨くのは、さらに大変です。

お子さんの仕上げ磨きをするとき、「痛い」と言われたところをなんとなく避けて磨いてしまったり、子どもが動いて奥歯をしっかり磨くのが怖かったりする、という声もよく聞かれます。

口内環境に気になる点がある場合、まずは、親子ともに歯科医院に行き、歯磨きの仕方を学ぶことが重要です。磨きにくい部分や磨き残しが多い箇所などを、「歯医者さんに言われたところだよ」と、子どもと情報共有をしながら磨くことで、お子さん自身の歯磨きも、保護者の方の仕上げ磨きも、上手になっていきます。

私が歯磨き授業を行っている学校では、学校から帰ってから、家族に磨き方を教えるという行動を起こした子が何人もいたそうです。歯磨きの知識を家族で共有する機会を、ぜひ作ってみてください。
 

子どもの口臭対策には効果なし? マウスウォッシュやガムの有効性

プラークと歯茎の炎症

歯と歯茎の間に歯垢(プラーク)が付いており、歯茎が炎症を起こしている


子どもの口臭対策に、マウスウォッシュを頻回に使用させている方もいらっしゃいます。しかし、口内の細菌は「排水溝のぬめり」と同様、歯にしぶとく付着しているものです。そのため洗口だけでは、どうしても取れません。

もちろん、飲食後に洗口をしないよりは、したほうが良いでしょう。しかし、歯磨きを上回るほどの効果はありません。間食後やジュースを飲んだ後などは、本来は歯磨きをしてほしいところです。面倒くさくて、どうしてもできないような場合の選択肢として考えてください。

ガムは、砂糖が入っていると逆に口臭が強くなってしまうことがあるため、注意が必要です。ノンシュガーガムも、洗口剤による臭いのマスキング効果や、一時的な口臭の緩和にしか働きません。口臭の根本的な原因が改善できるものではないとことを、ぜひ知っておいてください。
 

しつこい子どもの口臭は、歯科医院をうまく活用して改善を

子どもの口臭の改善は、親の働きかけがないと難しいものです。なかなか改善が難しそうな場合は、歯科医院を活用しながら、歯磨きの本やアプリなどを試してみるのも良いと思います。

毎日の「歯磨き」の改善によって、子どもの口臭は改善できます。家族みんなでお口の健康に意識を向けたいですね。
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