そういえばフジテレビの女性アナウンサーは30歳前後で結婚して「寿退社」したり、退職して他の仕事に就いたりする人が目立つ。
もともとは1972年まで、フジテレビの女性社員は25歳定年だったそうだ。当時、女性は「単なる華」であり「社員の結婚要員」だったのかもしれない。男女雇用機会均等法が成立した1985年より前は、他の企業だって多かれ少なかれ、そういう側面はあっただろう。
「イケオジ」はいても「イケオバ」はいない
それにしても、である。女性は若いほうがいいという価値観は、どうやって根付いていったのだろうか。日本人男性のそれはかなり強固である。江戸時代は「年増女」がけっこうモテていたりするし、若い=よしとは必ずしも考えられていなかったのではないだろうか。フランスでは「ワインと女性は熟成したほうがいい」と言われているが、日本ではちょっと年を重ねると「おばさん」と揶揄(やゆ)される。「イケオジ」はいても「イケオバ」はいないのだ。
「おばさん」には図々しさ、あつかましさなどの評価も含まれる。「若々しいおばさん」はいても、「きれいなおばさん」という言い方はない。「おばさん」そのものがマイナスイメージでしか語られないのだ。
そもそも「若々しい」とつくのがいら立たしい。ネットを見れば、やたらとしわを隠す化粧品が大挙して押し寄せてくる。うっかり読んだら、シワひとつない女性のほうがいいに決まっていると、まるっと洗脳されそうである。
若い=生殖能力
結婚を考えたら、互いにある程度若いほうがいいに決まっている。50歳同士が結婚しても、ほとんど子どもは望めない。男性から見れば、妻が若いほうが子どもをもてる可能性は高い。とはいえ、不妊の原因は男女半々なので、女性さえ若ければ子どもができやすいというわけでもない。ただ、これは結婚を考えている場合の話で、一般的に若い女性が好きな男性が多いことの説明にはならない。「一緒にいると若さがもらえる」「若い女性と話すと自分も若いような気持ちになれる」という説明のほうが当たっているかもしれない。
男性は「対等」を嫌う?
「私が社内の男性達を見ていて思うのは、結局、男性は『対等』を嫌うのではないかということです」きっぱりそう言うのはユカリさん(45歳)だ。男性がモテる要件として「聞き上手に徹する」というのがあるが、これも若い女性相手に限った話。我慢して聞いていれば、感謝されておいしい目にあえるかもという下心の表れだろう。
もちろん「下心」が悪いわけではない。じっくり聞いて相手を肯定して、求められれば意見やアドバイスを短く「授ける」。これで若い女性にモテるんだと言う50代男性もいるという。
「話をしていても、あちらが言ったことに対して、こういう見方もありますよ、こうも考えられますよと意見すると、露骨に不快感を表す男性って多いんですよ。仕事は別ですよ。仕事なら受け入れてもらえる可能性もある。でも世間話とか時事問題とかだと、『それって屁理屈じゃないの?』『理屈っぽいねえ』と嫌な顔をされる。同等に話したくないんだろうなとよく思います」
ユカリさんの夫は3歳年上だが、結婚してしばらくは、やはりユカリさんが何か言うと「どうして夫に盾突くかなあ」とつぶやいていた。盾突いているわけではなく、同等の立場で話をしているだけだと何度も言った。
「『うちのおふくろはオヤジに盾突いたことがない』と言うから、それは対等な関係じゃなかったということでしょ。今どき恥ずかしいよ、そういうこと言うの、とやり込めました。だって夫は私にプロポーズする時に『一緒の歩幅で歩いていきたい』と言ったんですよ。あの言葉は何だったのと言うと、結構まじめに“対等に相対するというのはどういうことか”と考えたみたいです。夫が変わらなければ私は離婚も厭わないつもりだったから、夫が変わってくれたのはありがたかった。その後の子育てにも大きく影響しています」
夫とは話し合いにならない
女は男に従うもの、何か言ったら尊敬のまなざしで見てほしい。そんな従来の男女役割に縛られている男性は多いのだろう。そんなことをしてくれるのは年齢の離れた年下妻だけかもしれない。逆に言えば、女性だって自分の言い分に従ってくれていつでも崇(あが)めてくれる若い夫がいれば、しばらくの間はうれしいものだろう。だが、女性はもっと「話し合い」や「共感しあうこと」を好む。「夫とは話し合いにならない。夫は言葉で私を組み伏せるように従わせたがっているだけ。こっちの意見なんて聞かない……と言っている女友達もいます。男性の何割かは心のどこかで女をバカにしている、女を憎んでいると感じることもあります。母親との関係なのか、育った環境なのかは分からないけど……」
母親に限りない愛情と、裏返しの畏怖を感じたことのある男性は少なくないのではないだろうか。それが成熟した女性を怖がることにつながっている可能性もある。
「年を重ねたら、男性からは見向きもされない」と感じている女性は少なくない。この国における男女の乖離(かいり)は、さらに進んでいくのかもしれない。
<参考>
・「私たちの40年—民放労連女性協議会のこれまでの取り組み」(民放労組 女性協議会)
・「『25歳定年』『お茶くみは仕事』の中で “女子アナブーム”に・・・本人の目から見た【女子アナたちの時代】」(FNNプライムオンライン)