1つには驚くくらい実際に大食いだが、食欲に波があるので妻が食事の用意をする場合は対応できないケース、2つめに外では少食、家では大食漢というケース、3つめはモラハラがらみ(妻が困るのを見て満足)、4つめは妻側が夫の体格や食欲と、現実の食事との相関性を考えていないケース。
さらに、夫が本当に何も考えずに悪気もなく作り置きや子どものお弁当のおかずを夜中に食べてしまうケースもある。
「ついうっかり」と言い訳
「夫はシフト制の仕事なので、私や子ども達とは生活時間帯がすれ違うことが多々あります。ときどき食欲がコントロールできなくなるんだよねという話も聞いていたので、夫のためにこんにゃくや野菜を使った作り置き惣菜みたいなものはいつも冷蔵庫に入れてあるんです」マナさん(44歳)もフルタイムのパートで仕事をしているが、夫の健康を考え、夜中に食べるならと、なるべくカロリーの低いものを準備している。
「でも夫は冷蔵庫を覗いて、明日の子どものお弁当に入れる予定の小さなハンバーグなんかがあるとそれを全部食べてしまう。朝食べようと思っていたポテトサラダなんかも半分以上なくなっている。深夜から未明にかけてそういうものは食べないほうがいいと言ってあるのに……」
夫に言うと、「あ、ごめん。弁当用だったんだ。冷蔵庫を開けたら目に入ったから」と答えたので、それ以来、冷蔵庫に貼りつけてあるホワイトボードに「○○は食べないで」と書いておいた。だが、どうやら夫はボードを見ない。そこで保存容器に「食べるな」と書いた。それでもうっかり開けてしまったと夫は言い訳をする。
家にあるものはオレのもの?
「これだけ言ってもダメなのは、夫は家にあるものはすべて自分のものだ、お前達が食うなというモラハラなのではないかと思ったんです。それとなく夫に聞くと、そんなつもりはない。本当についうっかり食べちゃうんだ、あまりに疲れていて自制が効かないだけだ、と。挙げ句の果てに『弁当なんてどうにかなるでしょ』と言い放った」うっかり食べたとしても、その言い草は妻を怒らせる。
「いつだったか冗談交じりに、近くに住む義母に愚痴ったことがあるんですよ。そうしたら義母が『あら、いまだに? 子どももいるのに?』とビックリしていて。彼は長男で、下に妹がいるんですが8歳離れているんですよ。『8年間、一人っ子として私たちも甘やかして育ててしまった。だから妹が生まれて親の目が妹に注がれた時は、かなりわがままになって暴れたものよ。
彼は妹に何かを分け与えたことがない。お菓子をもらっても一人で食べてしまう。口が酸っぱくなるほど妹にも分けなさいと言って、ようやく渋々少し分けるだけ』と。心が飢餓状態だったのかもしれませんね。でも今は大人ですからね。ちょっと想像すれば子どもの分だとすぐ分かるはずなんですが……」
こうなったら、もはや冷蔵庫を分けるしかないのだろうかと、マナさんは真剣に考えているという。
いただきものを食べてしまう夫
マナさんの夫と同様のタイプなのが、タカエさん(40歳)の夫だ。「うちは子どものお弁当がないし、私はあまり作り置きをしないので冷蔵庫の中を食い尽くされて困ったことはないんですが、いただきものを夫が一人で食べてしまうことは時々あります。不思議ですよね。家族に分けるという意識がないのかもしれない」
たとえばタカエさんが近所のママ友から手作りクッキーをもらったことがある。1つひとつ包装してあったので、一人娘と夕飯後に1つずつ食べ、「あとは明日ね」とテーブルの上に置いておいた。残りは6つあった。
「翌朝、起きたらひとつもなかった。包装してあった袋がキッチンのゴミ箱に捨ててありました。起きてきた夫に聞いたら、『え、食べていいんだと思った』と。娘が楽しみにしていたのにと言うと、『それは悪いことをした』と言いつつ、『またもらってくれば?』と無神経な言葉を発する。全然悪いと思ってないでしょという感じですよね」
娘から猛烈な抗議を受けたが、「ママがテーブルの上に置いておくから、食べていいと思っちゃったんだよ」とタカエさんのせいにされた。こういう言い訳が本当にイラッとくると彼女は顔をしかめる。
夫にあるのは自分の欲求だけ
「先日も休みの日に、娘と私がちょっとショッピングに出かけたんですよ。自宅マンションのエントランスで下の階の知人が『あら、ちょうどよかった。さっき、だんなさんが散歩してたから隣駅にできた鯛焼き屋さんの鯛焼き、預けたからね』って。その知人と数日前に、鯛焼きおいしいらしいって話していたばかりだったから、娘も喜んで。帰宅したら、夫が鯛焼きをほおばっているところでした」5つもらって、夫が食べているのは3つめだという。帰宅が遅れたら全部食べるつもりだったのだろうか。
「3人家族で5つの鯛焼き。どう分けるのが一般的なんでしょうかね。私だったら娘に2つあげるけどねと言うと、夫は『甘いものはよくないっていつも言ってるじゃないか。オレが代わりに食べてやろうと思ったんだ』って。結局、夫は家族の人数とか子どものこととか、何も考えていない、自分の欲求だけなんだなとよく分かりました」
自分勝手、家族への思いやりがない。それが意識的ではなく、無意識に近いのがかえって始末に負えないのかもしれない。