亀山早苗の恋愛コラム

「実は僕、妻に内緒で……」40代男性が敢えてパイプカットという避妊法を選択した切ない理由

年明け早々「パイプカット」が話題に……。なんのためにするのか、どういう避妊法なのかは意外と知られていない。またパイプカットを検討する目的も、人それぞれのようだ。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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さまざまな避妊法があるなかで「パイプカット」を選択する理由は?

さまざまな避妊法があるなかで「パイプカット」を選択する理由は?

パイプカットが話題になっている。なぜ今ごろ……と思ったら、“年上のがんサバイバー妻が年下夫にパイプカットしてもらった”エピソードを描いた漫画が発端らしい。
<目次>

パイプカットを公言した著名人

そういえば、名司会者として著名な大橋巨泉さんや俳優の松方弘樹さん、元ブラジル代表のサッカー選手・ロナウドなどがパイプカットしたことを公言している。

パイプカットは何のため?

すでに子どもがいて、これ以上は望まない場合、あるいは妻の体調の問題でピルを飲めない場合、夫が浮気して隠し子が発覚した場合などなど、パイプカットをする理由は人それぞれだ。もちろん、妻が夫に強要するものではない。避妊の方法はいくらでもある。

パイプカットのメリット・デメリット

パイプカットというのは、精管を縛ることで睾丸で作られた精子が精液の中に入らないようにする男性不妊手術だ。詳細は避けるが、手術時間はおよそ15分程度だという。現在では無切開の方法を取り入れている病院もある。

パイプカットのメリットは、ほぼ100%に近い避妊効果(パール指数0.1~0.15人 ※100人の女性が1年間で何人妊娠するか)があること、日帰りで手術ができること、合併症発症率が低い手術であること、女性の体に一切負担をかけないことなどが上げられる。また、性欲が落ちることもないし、射精や精液も通常どおり。ただ、精液の中に精子がいないということだ。

もちろんデメリットもある。どんなに「簡単な」手術であろうと、精巣にメスを入れるのだから出血はするし、体質によっては感染症を起こすリスクもある。そして最大のデメリットは、もし術後に事情が変わって子どもがほしいとなっても、元に戻すのが難しいこと。再度精管を吻合(ふんごう)しても思ったような効果が得られないことが多いという。妊娠を望むなら、精巣から精子を取り出して顕微授精をするしかないかもしれない。いずれにせよ、100%元に戻せる保証はないようだ。

42歳女性「あらゆる避妊法を試したけれど」

望まない妊娠を防ぐためには、適切な避妊法を選択すべきだが……

望まない妊娠を防ぐためには、適切な避妊法を選択すべきだが……

「うちは3人の子どもがいるので、これ以上の妊娠は望んでいません。夫とはいい関係なのでセックスもしますが、ときどき妊娠するかもとヒヤヒヤします。コンドーム(※編集部註:パール指数2~18人)を慎重に使ってはいますが、異物感が強いので本当はないほうがいいなと思うんです。

私は体質上、ピル(※編集部註:パール指数0.29人)が合わなくて飲めない。避妊リング(IUS ※編集部註:パール指数0.2人)も試してみたけど痛くて慣れなかった。何の心配もなくセックスできたら、もっと楽しめるのにと思うことはありますね」

チカコさん(42歳)はそう言う。避妊に失敗し、中絶をする40代既婚女性は案外多い。彼女も、できれば夫にパイプカットしてほしいと思ったこともある。

「でも、夫は注射も怖がるタイプ(笑)。パイプカットの話をしたら『知ってるけど怖くてできない』って。それでも、ふたりで病院に行って医師から話は聞いてきたんですよ。私は、それほど怖い手術ではないと思ったけど、夫は精巣に穴を開けると聞いただけで固まっていました。

まあ、私が逆の立場なら、やはり固まるかもと思ったので、もちろん無理強いはしません。それをすることが愛情の証だと脅迫するのも気の毒ですよね」

女性の体に一切の負担をかけないパイプカットは女性にとっては大きなメリットだが、夫に心身のデメリットがあるなら、それも避けたかったとチカコさんは言う。

「子どもを欲しくない方が避妊をすればいいという問題ではない。ふたりの問題ですから。どちらにも負担にならないのが一番。結局、今のところは仕方なく、排卵時期をチェックするのとコンドームの併用です。いずれ私が閉経したら心置きなく楽しもうねということになっています」

40代男性「妻に秘密でパイプカット」

一方で、ヒロカズさんという40代後半の男性が、こんな話をしてくれた。

「実は僕、妻に内緒でパイプカットしたんです。正直いうと、浮気相手に妊娠されたくないから。別に常時浮気しているわけではないけど、そういう機会に恵まれたとき、パイプカットをしているとラクなんですよね」

妻が聞いたら激怒するのは確実だ。パイプカットする際は、既婚者なら配偶者の同意書が必要なのだが、医師の目の前で書かされるわけではないのが実情。

「もう時効だから言いますが、当時付き合っていた女性に頼んで。妻からは下の子が産まれてからずっと拒絶されていたので、つい外で……ということがあるんです」

ヒロカズさん自身は、非常に快適な生活が送れるようになったという。離婚するつもりはないが、妻から拒絶されて心身ともに寂しかったから精神的に解放されたそうだ。

「本当は夫婦で話し合って決めていけたらいいんでしょうけど、僕はそれができなかった。それでも外に子どもができるリスクはほぼなくなったのだから、それでよしとしようと思っています」

妻との関係では心身ともに満たされていないが、子どもたちとは一緒に暮らしていたい。そんな彼にとっては「やむを得ない手段」だったらしい。それでも妻が聞いたらいい気持ちはしないだろうから、妻には絶対に秘密にすると彼は言った。

男も女も、「妊娠するため」だけに性的な関係を望むわけではない。彼が言うように、パイプカットは避妊のひとつの選択肢。簡単に元には戻せないという意味では、女性のピルや避妊リングよりやっかいかもしれない。生きる環境も気持ちも変わっていくことがあるのだから。

<参考>
・「望まない/予期しない妊娠を避けるために」(日本産婦人科医会)
 
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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