元日に親が現れた!?
やはり仕事のため年末年始に帰省できなかったリツコさん(37歳)は、事前にそれを親に伝えていた。「大晦日は遅番で仕事だから帰宅は深夜、2日の午後から仕事。だから帰れないと言ってあったんです。すると元日の朝早くにチャイムが鳴って。オートロックなのでカメラを見たら、両親が手を振っていました(笑)」
元日は眠り続けると決めていたのにと思いながら、しかたなく施錠を解除した。両親は部屋になだれ込むようにやってきた。
「あなたがここに越してきてから初めてよ、私たちが来るの。いつも仕事仕事って、ちっとも時間をとってくれないから……と、あーだこーだ言い始めて。3年前に越してきたんですが、狭いんですよ、うち。
一人暮らしだから狭くていいんだけど、両親が座ると結構うっとうしい。狭いわねえと母親が嘆いて。『家賃が高くて広いところには住めないの』と言ったら、『だったら帰ってらっしゃいよ。うちの方にだって仕事はあるわよ』って。田舎が嫌だから都会に出てきたんですよ、私は。そして願い通りの仕事に就いて頑張っているのに、それを認めようともせずに帰って来いとは……」
見合い話を進めたかっただけ?
思わず仏頂面になると、「ねえ」と母親はいきなりお見合いの釣書を出してきた。いい人なのよ、土地持ちだし……としゃべり続ける。父親が「まだ朝飯も食べてないんだろ」とおせち料理を並べてくれた。「父はわりと私の気持ちを分かってくれているんだけど、母がうるさいから正直に話せないんですよ。私には兄がいるんですが、不慮の事故で体が不自由になり、施設に入っている。だから親にとって私が唯一の救いみたいになっている。もちろん、気持ちは分かるんだけど、いつでも支配したがる母が重いんですよね」
とりあえず家族3人で朝食をとり、ほっとしたところで、母はまたも「ねえ、結婚しないの」と言いだした。
「なんだかブチッとキレちゃったんですよ、私。今日はずっと眠ろうと思っていたのに、いいかげんにしてよ、もう帰って!と言ってしまった。母は泣き出し、親がこんなに心配しているのにとグチグチ言って。高校生じゃないんだから、もういいかげん放っておいてと決定的な言葉を投げつけました。父が『とにかく帰ろう』と母を促し、『悪かったな、疲れているところを』って」
マンションから出ていく2人を見ながら、リツコさんは苦い思いをかみしめていた。親が来なければ、1月末に数日間休みがとれるから帰ってみるつもりだった。だが、こうなってしまっては帰る気持ちが失せていく。
「心配するより信頼してほしい。結婚だけが幸せへの道じゃないことも知ってほしい。親戚だって離婚組がけっこういるのに、それでもまだ結婚しなくちゃ女じゃないみたいな考えをもっている母の価値観を変えてほしい。そうでない限り、特に母親との関係は悪化するばかりですね」
元旦から揉めたくはなかったけど、とリツコさんは声を落とした。