人間関係

「人の懐にするりと入り込む」方法とは?38歳、人見知り営業職が同僚を観察して学んだこと(2ページ目)

途中入社で入ってきた女性は、人懐こく、取引先からの評判も上々だ。ちょっと観察していると、笑顔を絶やさないのはもちろんのこと、クレームがあっても落ち着いて代案を出せているし、とにかく人の話をよく聞いて、話題を掘り下げるのが得意なのだ。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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飲み会でも感じがいい彼女

飲み会やプライベートな集まりでも、マリエさんの話術は光っていたという。

「会社の飲み会では何度も彼女の気配り上手は見ていたんですが、仲よくなってから彼女に『友人を連れていく飲み会があるんだけど行ってみる?』と誘われたんです。合コンというわけじゃないんだけど、とにかく異業種の人たちが集まる会だと言われて行ってみたんです。彼女はそこでも歓迎されていました」

最近、何かはまっていることある? と出席者に聞かれたマリエさんは、「今は昭和のディスコですね」とさらりと言った。

「え、どこにあるの、いつ行くの、私も行きたいという人が続出、彼女はどういうところかを説明しながら、1度行ってほしいなあ、みんなで行きます? ということになって、いつ行くかが決定していました。人がどういうことに興味を持つか、どう言ったら興味を持たれるかがわかってるんでしょうね」

自然な流れで相手に話させるスキル

さらに彼女が決定的に人を惹きつけるのは、意外と自分から「私はね」と言わないところだとカオリさんは発見した。自分のことを話しているようで、実際は相手に自然と話させているのだという。

「風邪が流行ってるよねと誰かが言ったんですよ。そうしたら『○○さんは、いつも元気ですよね。何か秘訣があるんですか』とすぐに相手に話を振る。珍しい姓の人がいたんですが、出身地を聞いたりルーツを尋ねたり。相手が自分に興味をもってくれていると思うんでしょうね、うれしそうに話していました。それをニコニコと聞いている。あとから彼女に聞いたら、『私、人の話を聞くのが好きなのよ』って。『自分とは違う人生を歩んでいる人の話っておもしろいじゃない?』とも言っていました」

無理に人に興味をもとうとしなくてもいいと思う、私は人の話が好きなだけだからと彼女は言ったそうだ。

「私も興味はあるんですよ、でもこれを聞いたら失礼かなと怯んでしまう。マリエさんは怯まないんですよね。ニコニコ笑いながら直球で聞いてしまう。珍しい姓の人にはルーツを聞いたあげく、家族に関しての質問まで連発。その人は『いやー、両親は離婚しててさ』なんて平然と話したあげく、『あれ、オレ、なんでこんなことまで言ってるんだろう』と。でも話してすっきりしたとも言っていました。初対面なのにわりとぐいぐいいくんですよ。しかも相手はぐいぐい入られても平気、むしろ話して気持ちがよかったという。マリエさんって不思議な人だなと思いました」

だが、実はマリエさん、極度の対人恐怖症だった時代もあったとカオリさんに話したそうだ。それが嫌で、いろいろな場に出かけて克服したのだとか。

「私も今、どういう表現をしたら人は気軽に話してくれるのか、こちらからどう問いかけたら人は警戒しないのか。それを試しているところです。上っ面の言葉だと人は心を開かない。人に誠実に向き合うことが大事なのかもしれないと分かりかけてきたところです」

人間関係は難しい。だが難しいと嘆いていても何も変わらない。カオリさんは、マリエさんのおかげでほんの少し、自分が変わったような気がすると明るい笑顔を見せた。
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