子育て

【高校受験】安全校を望む親vs挑戦校を受けたい子。親子間の「志望校選びバトル」究極の解決法

高校受験は親子双方にとって大きなイベントですが、志望校選びについて親子の意見が食い違うことも少なくないのではないでしょうか。そのような場合に親として大事にしたいマインドを、アドラー心理学「課題の分離」を活用してお伝えします。

坂田 聖一郎

執筆者:坂田 聖一郎

子育て・教育ガイド

受験生がいるご家庭では、冬休みは親子共々ソワソワしながら過ごすことも多いのではないでしょうか。子どもの高校受験は親と子にとって大きな節目となるイベントです。今回はその受験において、親と子の希望進路が異なる場合の対処法をお答えします。
受験生(イメージ)

子どもが受験したい学校と親が受験させたい学校が違ったら、どうすればいい?

高校受験はそもそも誰の課題なのか?

親が「確実に受かる学校を選んでほしい」と考える一方で、子どもが「チャレンジ校を受験したい」と願う場合、両者の意見が衝突することも珍しくありません(その逆もあり)。そのような場合は、アドラー心理学の「課題の分離」という考え方を活用しましょう。

高校受験において、まず考えるべきは「受験をするのは誰なのか?」という点です。この答えは明確で、受験は「子どもの課題」です。実際に受験を行い、学校に通うのは子ども自身であり、その選択に責任を持つのも子ども自身。

では、子どもの受験において親は関係ないのか?というと、もちろんそうではありません。幅広く情報を集めたり、塾代や受験料などを支援したりすることは親の役割です。しかし、最終的に志望校を選ぶのは子どもであり、その決定を親として尊重することを忘れてはいけません。

もし親が子どもの課題を自分の課題として抱え込むと、「ねじれ」が生じ、親子間の信頼関係が損なわれることがあります。このねじれを防ぐためにも、親が自分の役割と子どもの役割をしっかりと切り離して考えることが大切です。

志望校選びにおいて、親が安全圏を求める気持ちは理解できます。しかし、チャレンジ校に挑みたいという子どもの希望をくむことも、主体性を育むうえで大切です。まずは本人の思いを聞いて受け止め、その上で親の課題である部分をどうするかを考えて、子どもと折り合いをつけていくとよいでしょう。

もちろん経済的な部分で、ここまではOKだけど、これ以上は支援できないといった事情もあるでしょう。そのような事情も、子どもの気持ちを理解したうえで伝えれば、全く同じ選択をすることになったとしても、子どもの捉え方が変わってきます。親が勝手に決めて、さらには子どもの課題にまで踏み込むのとは全く違った受験体験になるでしょう。
受験生(イメージ)

受験は「子どもの課題」。子どもの意思を尊重することも大事!

親が自身の経験から子どもに進路を押し付けている可能性も

親が子どもと自分の課題を分離できない背景に、自分自身の幼少期の経験が影響していることもあります。過干渉な親に全て決められ、自分の意思が尊重されなかった経験があると、自己決定感が育ちにくくなります。その結果、自分が親になったときに同じように過干渉な態度を取ってしまい、子どもの意思を受け入れるのが難しくなることも……。

また、親の期待に応え続ける環境で親自身が育った場合、自分の意思を後回しにしてきた影響で、子どもの意見を「反抗的」と感じてしまうこともあります。このような背景を持つ親は、子どもと自分の課題を分けることが難しくなりがちです。しかし、課題を分離することで親子共によりよい受験体験が可能になります。課題の分離を進めるためには、セルフコーチングが有効です。

セルフコーチングのやり方を3つご紹介しましょう。

1. 誰の課題かを問い直す

子どもの受験に関する不安やモヤモヤを感じたとき、「これは私の課題なのか、それとも子どもの課題なのか?」と自問してみましょう。高校受験は子どもの課題であり、親はそれをサポートする立場にすぎません。受験というイベントの中でも、子どもと親の課題を分けることができれば、関わり方や対応がスムーズになり、余計なエネルギー浪費が起こらないでしょう。

2. 子どもの課題に踏み込みそうになったら

親自身が抱えている子どもへの期待や不安を認識することも重要です。いったん書き出してみるのもよいでしょう。それが自分自身の過去の体験やコンプレックス、価値観に基づいている可能性もあります。

それに気付けると、子どもを自分とは違う人間だと認識することができ、子どもへの関わり方も俯瞰(ふかん)できるようになるでしょう。これにより、子どもの選択への過干渉を防ぐことができます。

3. 子どもに「自分で選んだ」認識を持たせる

もちろん、親の経済的な理由なども含めて子どもの選択を受け入れることが難しい場合もあります。そのようなときでも、最終的に子ども自身が「進路は自分で選んだ」と思えることが大切です。

最初から子どもの意向を全て受容するのではなく、親がさまざまな情報を提供したり、親の考えを1つの選択肢として提示したりしたうえで、「自分で選んだ」という認識を持たせるのでも構いません。親が最終的な子どもの選択を尊重できれば、子どもは自分の課題に責任を持つ体験ができるでしょう。
受験生(イメージ)

主体的に受験に向き合える環境づくりこそが、親にできる最善の受験サポート

親子でよい受験体験を目指して

筆者自身、高校受験においては無難な学校を選び受験しましたが、「チャレンジ」をした友人を見るとうらやましく感じました。たとえ志望校に落ちたとしても、チャレンジしたことやそれに向けてした努力は素晴らしいもの。チャレンジしなかった人には得られない体験です。

親としてできる最善の受験サポートは、課題を分離し、子どもが主体的に受験に向き合える環境を整えることです。子どもが選んだ学校であれば、結果がどうであれ後悔は少なくなります。逆に「親が選んだ学校」という捉え方を子どもがしている場合、たとえ受験に合格しても、入学してから楽しい高校生活が送れなかったり、自分でキャリアを実現していく“自立した”生き方ができなくなる可能性もあります。

高校受験は、子どもが自分自身の選択に責任を持ち、成長する貴重な機会です。親が子どもの課題に過剰に介入せず、子どもを信じて見守る姿勢を忘れないようにしましょう。普段以上に難しいことかもしれませんが、これは親にとっても成長の機会となるでしょう。

コーチングを教えている筆者からすると、子どもを信じることを試される絶好の機会が受験です。ぜひこのビッグイベントにおいて、どんな結果になっても子どもに対して「がんばったね」と言ってあげられる存在であってほしいと思います。
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