しかし中にはあるきっかけで関係を立て直し、夫婦仲が修復した珍しいケースもあるようです。
義両親が“スープの冷めない距離”に引っ越してきて
妻と子の3人家族で東京都内に暮らす直人さん(40歳・仮名)。かつては妻と離婚することを真剣に考えたほど、関係が破綻していたといいます。「結婚当初は仲がよかったんです。不仲になったきっかけは、子どもが産まれてから親が近くにいたほうが何かと助かる……という理由で、妻の両親がすぐ隣のマンションに引っ越してきたこと。孫に会いたいからと言って義両親は頻繁に家に来るようになりました」
義両親とは文字通り、“スープの冷めない距離”に暮らしていた直人さんですが、次第にストレスが溜まり、追い詰められていったそうです。
「気付けば毎晩の夕食も義両親が一緒。仕事から疲れて帰ると、必ずと言っていいほど家に義両親がいるんです。しかも僕をあごでこき使うし、家庭内でどんどん肩身が狭くなっていきました。家に帰るのも憂鬱(ゆううつ)になり、次第に妻とも険悪になっていきましたね」
まだ子どもが幼いため、すぐには離婚に踏み切れずタイミングを見計らっていた直人さん。最悪な状態が3年以上にも及んだといいます。
「正直に言うと、当時は飲み会に行って出会った女性と不倫もしていました……」
完全にこじれてしまった夫婦関係。直人さん自身も、修復することは二度とないと思っていたそうですが、その後なんと持ち直したのだとか。
別居したいと妻に伝えたら
「ついに耐えられなくなって、別居したいと妻に伝えました。そのときに初めて、夫婦でとことん本音を話し合ったんです。険悪な仲だったとはいえ、妻は別居や離婚を望んでおらず、解決策を一緒に考えてくれたのは今思うとありがたかったです。話し合いに話し合いを重ねた結果、家族3人で引っ越しをして、義両親と距離を取ることになりました。僕自身も、妻の育児の負担が減るように、これまで妻に任せっきりにしていた育児を一緒に頑張ると約束しました。お互いが相手の気持ちを考えるようになって、関係が劇的に改善しました」
ある日突然、夫から離婚届を突き付けられた
亜沙美さん(34歳・仮名)は、現在は家庭円満ですが、2年前に夫から離婚届を突きつけられたことがあるといいます。
「夫は外資系企業に勤めていて、かなりの激務でした。結婚した際に私が仕事を辞めて、専業主婦になったんです。すぐに子どもをつくるつもりでしたが、なかなかできず……。
そもそも私は家事は苦手だし、家にいてもあまりやることがなくて。夫も忙しかったので最初の頃は『好きなことをして過ごしたらいいよ』と言ってくれていたんです。それで自由気ままに遊びに出かけていたんですが……」
もともと亜沙美さんは大のお酒好き。仕事が忙しく夫はほとんど家にいなかったので、毎晩のように飲みに出掛けるようになったそうです。夫がたまに早く帰っても家におらず、深夜に泥酔して帰ってくることもしばしば。
夫は亜沙美さんに対して直接何かを言ってくることはなかったものの、明らかにいら立ち始め、かつて優しかった彼が別人のように冷たくなってしまいました。二人の関係はみるみるうちに冷え切っていったのだとか。
「離婚届をいきなり突き付けられたときは驚きました。私は仕事をしていないので突然離婚すると言われても困るし、すぐに離婚は受け入れられず、しばらくの間は別居生活が続きました」
自分を奮い立たせ行動してみると
「一度こじれた関係はなかなか元に戻らなくて、夫もなかなか心を開いてくれなくて。もうダメかもしれない……と何度も諦めそうになったのですが、関係を変えるには自分が今の状況を変えるしかない!と奮い立って。
まずは仕事をしよう!と思い、就職活動を頑張ってなんとか仕事を見つけたんです。そこで今までの態度を全て謝ったところ、夫が考え直してくれて、離婚を踏みとどまってくれました。今では関係性も安定していて、やっぱり子どもも欲しいねという話もしています」
もともとはどんなに愛し合って結婚した二人でも、一度関係が壊れてしまうと、そこから持ち直すのはなかなか難しいもの。
しかし紹介した二人のケースのように、離婚危機を乗り越えた夫婦のエピソードも珍しくありません。
わずかでもお互いの愛情が残っていることが前提ではありますが、互いに話し合い、現状を変える努力をすることで、二人の関係が変わる可能性はあります。カウンセラーなどの専門家に相談する方法もあるでしょう。
壊れた関係を修復させるには、相当の覚悟と根気は必要ですが、後悔をしないためにも問題に向き合ってみることが大切です。
【この記事の筆者:小澤 サチエ】
ライター/エディター。慶應義塾大学文学部卒。『東京カレンダー』Web編集部にて数々のヒット企画を手掛けた後、フリーランスのライター、エディターとして独立。恋愛や結婚、離婚など幅広く執筆。