夫婦関係

「性バナ」もできない日本人……ショートドラマ1460万再生が証明した“レス問題”の深刻度

男女の「セックスレス」問題をテーマにしたショートドラマが、TikTokをはじめとするSNSで大人気になっています。その根底には、40~50代を中心とした大人世代やZ世代の「セックスレス問題」の深刻さが垣間見えるのです。

三松 真由美

執筆者:三松 真由美

夫婦関係ガイド

日本人のセックスレス問題

日本人のセックスレス問題は、大人世代も、Z世代も深刻化……

筆者が20年以上取り組んでいるセックスレス問題は、ここ数年で急激にメディア露出が増えています。かつてはセックスレスという言葉自体がタブーで、レス問題についての記事がアダルトコンテンツ扱いされた時代もありました。  
<目次>

「セックスレス」ドラマがリビングに流れる時代

2023年、筆者が原作コミックに協力した『あなたがしてくれなくても』(双葉社)がフジテレビでドラマ化されて大きな話題になりました。

(主人公を演じた)奈緒さんのような透明感あふれる俳優さんによる、「うち、セックスレスなんです」という言葉が日本全国のリビングに放たれる時代が来るとは……。夫婦仲相談所を開始した25年前には思いもよりませんでした。

このドラマは、

「夫と見るのは気まずいから録画して見てる」
「うちもレスだから、『TVer』見ながら泣いてる」

など、多くの女性たちの共感を呼びました。

もともとセックスレスに悩んでいた人にとって“刺さる”ドラマであったことはもちろんですが、「家族としては仲良し」なセックスレス予備軍や、営みはあるものの満足できていない夫婦など、多くのカップルが「夫婦愛と性愛」について考える機会になったようです。

さらに2024年には、再び「映像の力」に驚く現象が発生しました。
 

「セックスレス」ショートドラマが1460万再生

それが、「日常で忘れがちな小さな愛」をテーマに縦型ショートドラマを作り続けているクリエーター集団「ごっこ倶楽部」です。ショートドラマカテゴリーにおいて再生数、フォロワー数、いいね数で国内トップを誇ります。結成1年で累計再生回数5億回超えと急成長。ショート動画の中に、身近な人や愛する人を大切にしたいと思える内容が込められており、「泣ける!」「キュンとする!」と話題になっています。

筆者は、ごっこ倶楽部とのコラボでセックスレスに関するショートドラマ『愛わない結び』を監修。公開約1週間で、ショートドラマ3本を公開した各種媒体の合計再生回数が1200万回を突破しました。

第2作『幸せの選択』は累計1460万再生とお化けのような回り方で、レス問題への共感コメントも膨大に寄せられました。役者さんたちの等身大の演技は、まさに「悩んでいるのはわたしだけじゃない」と思わせる迫力。
TikTokが2021年に発表した「主婦・ママ白書」によれば、TikTokユーザーの3人に1人が25~44歳であり、さらに25~44歳女性ユーザーの4人に1人が主婦ユーザーだといいます。またコンテンツビジネスラボによれば、TikTokユーザーの平均年齢が36歳に上昇したとの調査結果も。これがセックスレス世代と重なっていることが、セックスレス×ショートドラマの大バズリにつながったようです。

ミドルエイジもZ世代も……レス人口急増中

【ジェクス】ジャパン・セックスサーベイ 2024」の調査によれば、日本人のセックスレス率は男性64.3%、女性66.8%。また一般的に「子作りのためのセックス」を卒業する40代、50代女性においては、レスの割合がそれぞれ63.4%、87.7%にまで増えています。

さらに注目すべきは、この40代、50代女性のレス率は、2013年の同調査ではそれぞれ35.6%、33.3%にとどまっていたということです。この10年で夫婦の寝室事情は大きく変化しているのです。

世の中にこれだけ性に関する情報やコンテンツがあふれていても、まだまだ夫婦の性は「秘め事」で、互いのセックスに対する考え方をオープンに話し合えていない人がほとんどです。学校での性教育にも課題が多い日本では「恋バナ」ならぬ「性バナ」に関して、まだまだ未熟です。

「性バナ」が苦手な日本人には性的同意も難しい

さらに言えば、近年「恋人と付き合ったことがない」「セックスをしたことがない」という若者も増えています。

Z世代/ミレニアル世代に聞いた!恋愛観に関する意識調査」(僕と私と株式会社)によれば
、Z世代の40.5%は異性と付き合ったことがなく、交際経験のある人に過去に交際した人数を聞いたところ、6割が1~3人でした。

Z世代は「1人が気楽」「自由な時間が減る」などの理由で「恋愛を面倒だ」と感じる人が多いと言われています。それに拍車をかけているのが昨今話題の「性的同意」だと筆者は考えています。

もちろん、恋人や夫婦間であっても性的同意をしっかりとることは大切です。

しかし、自分自身の性についてしっかり考えて発信したり、相手の性嗜好をきちんと受け止めたりといった「性バナ」が十分にできていない状態で、「性的同意」だけが先行しても、「相手にきちんと伝えられない→同意があったか分からない→あいまいなままでは手を出せない」と、今後ますますセックスレスが加速していく恐れがあります。

若いうちから、恋バナだけでなく性バナもきちんとできるようになっていないと、結婚してからレスに直面するリスクが高まります。

レスでもいい、互いに納得できているなら

「レスでも仲良しならいいじゃん」という意見もあるでしょう。カップルの両方とも、レス状態で満足しているなら問題ありません。

しかし、もしどちらか1人でもレスに不満がある状態だとしたら、その方は家でも満たされず、外で不倫もできず、出口のない“性の迷路”を永遠にさまようことになります。

夫婦愛と性愛は別物かどうかは、カップルによって異なります。レス問題に直面したならば、ごっこ倶楽部さんと筆者のショートドラマのセリフを思い浮かべてください。ドラマではバーのマスターに言ってもらっています。

「背を向けず、あきらめず、先送りにせず」

<参考>
・「あなたがしてくれなくても」(フジテレビ)
・「TikTok For Business、『主婦・ママ白書』を発表!」(TikTok For Business)
・「TikTok ユーザーの平均年齢が『36歳』に上昇」(DIGIDAY)
・「ジャパン・セックスサーベイ 2024」(ジェクス)
・「Z世代/ミレニアル世代に聞いた!恋愛観に関する意識調査」(僕と私と)
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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