政治ネタが大好きな議論好き一家に異変
「夫とは、くだらない話から政治や国家観みたいなことまで何でも話します。ときには大議論になることも。そこに高校生の男女の双子が絡んでくるから、うちは賑やかというか議論好きというか。妙な家族だと思っていましたが、それが楽しいからいいよねという感じだったんです」ミチコさん(46歳)はにこやかにそう言った。同い年の夫との間に17歳になる双子がいる。共働きだったため幼いころはとにかく大変だったが、今となっては親が同い年、子どもも同い年で面白いと思うようになっている。
「夫と私がよくしゃべるから、子どもたちも自然とおしゃべりになった。何かトピックがある時は感情をぶつけず、冷静に理屈で話すのが私たち夫婦の流儀なんです(笑)。子どもたちもそれを見ていたんでしょうね」
家庭内で「朝まで生テレビ!」(※編集部註:BS朝日で放送される討論番組)状態の議論が交わされることもある。
ところが今年の初めから義母が同居することになった。70代半ばの義母は義父亡き後15年ほど一人暮らしを楽しんでいたのだが、最近は少し体力が落ちてきていた。昨年秋に転倒して骨折、入院。リハビリで自分のことはできるようになったが、心細くなったのだろう、施設に入りたいと言い始めた。
「本当に施設に入りたいならいいけど、本音は家族と住みたいんじゃないのと夫に言ったんです。元々そう遠くに住んでいるわけではなかったし、義母とは関係がよかったから、一緒に住むのは嫌じゃなかった。義母に『一緒に住みましょうよ。家の中を歩けるなら留守番くらいしてくれるでしょ』と冗談交じりに言ったら喜んでくれて」
他人の悪口や批判が大嫌いだという義母
しかし同居が始まってみると、たまに会うのとは大違いだった。なにより義母は極端なきれい好き。体が自由に動くなら自分で整理整頓や掃除をしたいのだろうが、若い時のようには動けないので、自然とミチコさんへの文句が多くなる。「あ、ミチコさん、そこの隅が汚いのよって。言ってから『ごめん。つい気になっちゃって』と。私は気にならないからいいです、このままで。お義母さん、気になるならこれでやってと粘着テープのコロコロを渡したら、掃除はこんなものでするんじゃない、雑巾がけよ、と。
私は仕事があるので無理でーすと流しちゃうんですけどね。お義母さんの方がストレスたまっているんだろうなと思いつつ、わが家の慣習は変えられませんと笑いながらよく言っていました」
それは日頃の会話にも及ぶ。義母は他人の悪口や批判をいっさい受けつけない。すてきなことではあるが、たまには家の中でだけ誰かの悪口を言ってすっきりしたいこともある。悪口だけでなく愚痴も聞こうとはしない。聞かないだけならいいが、「やめて」と言われるのがミチコさんのストレスになった。
>一家の楽しみ、政治の話にダメ出し