結婚する時に、結局、夫は調子のいいことを言っただけ
「仕事をセーブしたくない」共働き夫婦の子育て
「夫も私も、どちらも仕事をセーブする気がないんです。私はもともとやりたい仕事についていて、結婚するとき夫に『子どもをもつのはいいけど、仕事をセーブしたくない』と伝えた。すると夫は『どんなときも僕がカバーするから』と言ったんですよ。それなのに夫も今や忙しくなってしまって。カバーしてくれないじゃんと言うと、『オレ、会社からの期待が大きいんだよね』って。何様? という感じなんですよ」
少し笑いながら、リヨコさん(44歳)は言った。結婚して13年、小学6年生の娘と2年生の息子がいる。子どもたちは家事を手伝ってくれるようになったが、あまり子どもに負担をかけたくない。
「上の子は私立中学に行きたいと言うので塾が忙しくなっています。親も協力しなくちゃいけないし、仕事もあるし家事も積もっていくばかりだし。日々、まったく時間的余裕がありません。とにかくきちんと家事育児をだいたい同じ割合で分担してほしい。それが夫に対する私の一番の願いですね」
仕事をしていればスケジュール通りにいかないこともある。突発的なことが起こったときはすぐに連絡をするのがふたりのルールなのだが、夫はそれも滞りがちだ。
急病のフリをして夫がしていたこと
「つい先日も、夫が『心臓が痛い。大病かもしれないから病院へ行くね』と連絡を寄越したんです。その日は私、残業だからと言ってあったのに。だったら昨日、病院へ行けばよかったのにと電話をしたら、『昨日はたいしたことがなかった。でも今日行かずに、明日オレが死んだら夢見が悪いでしょ』と。それは一種の脅迫だねと言ってやりました」結局、心臓には何の異常もなかった。夫は「いやあ、ほっとした。本当に大きな病気だと思ったんだよ」と言い訳をしたのだが、あとから共通の知人が「あの日は病院帰りだけど、と言いながら飲みに行ってた」と聞き、残業を切り上げて帰宅せざるをなかったリヨコさんは激怒した。
急に帰宅して家事を担うのが嫌になることが夫にはあるようだ。リヨコさんだって今日は絶対にこの仕事を仕上げてしまいたいと思う日はある。だが、そこをなんとかおりあいをつけて帰宅するのだ、子どものために。夫にはその意識が薄いと彼女は言う。
些細なことが積み重なって信用できなくなる
コロナ禍を経て以前より少なくはなったが、リヨコさんにはときどき会食の予定が入る。もちろん夫にはかなり前から伝えているのだが、前日もしくは当日に「今日、具合が悪くて」と連絡が入ることも少なくない。「私が重要な仕事や会食が入っていると事前に言った日に限って、なぜ夫は具合が悪くなるのか。そしていつも何でもないという結果になるのか。あなたは私の仕事を邪魔したいのか、私の仕事がうまくいくのが気に入らないのかと詰め寄ったことがあるんです。すると別にその日を狙っているわけではなく、本当に調子がおかしくなるんだ、と。そんなのは信じられないし、そうやって些細なことが積み重なっていくと、強い不信感に変わるよ、人をバカにしないでちょうだいと怒りました」
それからは、どこか夫はおどおどして妻の顔色をうかがうようになっている。それもまた、リヨコさんをイラッとさせる原因だ。
家事だってたまると大変なことになるから、日々こなしていくしかない。
「私が倒れたら、あなたが何もかもやらなくてはいけない。どちらかが倒れたりしないようんにがんばろうねって言ってたじゃない、と夫に説教したのですが、言っているうちに、どうして自分だけがこんなに必死になっているんだろうと考えたら、だんだんバカバカしくなってきて……」
「夫を諦めて」いく妻の気持ち
ああ、自分はこうやって「夫を諦めて」いくんだなと見えてしまったそうだ。夫にもそのことを伝えた。だが、夫は実感がないのだろう。なんだかんだ言っても妻の文句を受け流していれば、そのうちすべて丸く収まると思っている。「ときどき何もかも放り出したくなることがあります。でもじっと耐えつつ頑張っているのは、ただひたすら子どもたちのため。夫に対してはまだ完全には諦めきれていないけど、だんだんその方向にシフトしてはきました」
妻が完全に夫を諦め、見捨てる前に、「家庭とは」と一度、夫たちは考えてみたほうがいいかもしれない。