「チュロス」と呼ぶ人がおそらく一番多いのではないかと思いますが、他にも「チュリトス」や「チュロッキー」と呼ぶ人もいるでしょうし、それ以外の呼び名で呼ぶ人もいるかもしれません。
実はこれらの呼び方はいずれも正しいといえます。このお菓子は、それだけたくさんの名前が存在しているからです。なぜなら「商標権」という権利が関係しているからですが、商標権の説明をする前に、まずはこのお菓子の歴史を少しひも解いてみましょう。
チュロスが日本で販売されるようになったのはいつ?
先述のお菓子は、ポルトガル起源説とスペイン起源説があるようですが、起源の一つであるスペインではこのお菓子を「チュロ」と呼び、「チュロス」は複数形の呼び名となります。このお菓子の形が羊の角(ナバホ・チュロ)に似ていることが、「チュロ」と呼ばれるようになった由来といわれています。
その後、発祥地のポルトガルやスペインだけでなく欧米各地で販売されるようになり、アメリカのディズニーランドでも販売されるようになった後に、日本のディズニーランドが開園してから2年後の1985年に、日本のディズニーランドでも「チュロス」という名前で販売されるようになりました。
そして、「チュリトス」「チュロッキー」などのさまざまな呼び名でこのお菓子は日本全国で販売されるようになっていきますが、いろいろな呼称がつくことになった理由は「商標権」という権利が関係しています。
商標権とはどのような権利?
商標権とは、名前を商品やサービスに使用することについての権利であり、特許庁に出願して審査を経て登録されることで発生する権利です。もしも先にその名前を使用していた人がいたとしても、特許庁に先に出願をして登録された人が権利者となります。では、「チュロス」を例にとり具体的にこの商標権の効力などについて解説します。
「チュロス」は、ディズニーランドで販売が開始された1985年に日清製粉が商標権を取得しており、商標権の効力が及ぶ範囲(指定商品)を「菓子」「パン」と指定しています。
よって、「チュロス」という名前を「菓子」や「パン」につけて販売などができるのは、日本では日清製粉のみとなります。日清製粉以外の会社や個人などが「チュロス」という名前を「菓子」や「パン」につけて販売などすると違法行為となり、「チュロス」という名前を付けた「菓子」や「パン」の販売停止や商品回収、損害賠償請求などを権利者である日清製粉から請求される場合があります。
ディズニーランドの場合は、正式な取引により日清製粉からチュロスを仕入れて販売しているため、日清製粉が商標権を持つ「チュロス」の名前を使用することの許諾を得た上で販売していると考えられます。
なお、商標権が取得されれば全ての商品やサービスでその名前を独占できるという誤解をされることがたまにありますが、あくまで特許庁への出願時に指定した商品やサービスの範囲内で名前を独占使用できるという権利です。
1985年に日清製粉が「チュロス」で商標権を取得した当時は、「菓子」や「パン」以外の商品やサービスに「チュロス」という名前を付けて販売をすることは、日清製粉以外の会社や人でもできる状態でした(現在は「菓子」や「パン」以外の商品やサービスでも日清製粉が幅広く商標登録をしています)。
ちなみに、日清製粉がWebサイトなどで販売している「チュロス」はディズニーランドで売られているものと同じですので、ディズニーランドと同じ「チュロス」が食べたい場合は日清製粉が販売しているものを購入されることをおすすめします。
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