人間関係

「独居老人って嫌な言葉」「みんなが寂しいわけじゃない」アラ還からの一人暮らしで考えた、次の生き方(2ページ目)

夫と離婚し、引き取った娘も独立して、一人暮らしを謳歌中ではあるが、60歳を過ぎると否応なく自分の最期のことを考える。健康寿命をどれだけ延ばせるか、一人でどう生きていくのか。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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娘の選択肢を減らしたくない

「よく高齢者が、子どもに迷惑をかけたくないと言いますが、その気持ち、よく分かるようになりました。私はたまたま40代で親を見送ってしまった。そのときは寂しかったけど、あとから親が早く亡くなったことに感謝したくなりました。介護しなくて済んだのですから。

そう言うと娘には『お母さんの考え方って冷たい。私はお母さんを介護するよ』と言われるんです。でも、自分の人生は自分のものでしょ。それを親の介護で潰すのは本当に申し訳ないと思うんですよ。だからいざとなったら、施設などを探して自ら入ろうと考えています」

ただでさえ離婚したことで、娘にはつらい思いをさせたのではないかとカナコさんは考えている。だが、あのまま結婚生活を続けていたら、もっと大変なことになったはずだからとも思うそうだ。

「親の勝手で子どもに不自由を強いたような気はしています。だからこれ以上、娘の人生は阻害したくない。たとえ頑固なばあさんと言われようとも……」

仕事だけでは健康寿命は延ばせない?

そのためにも健康寿命をどうやって延ばすか、最近はやたらとそれを考えるようになった。

「仕事だけじゃダメですね、やっぱり。もっと広く社会を見るような活動、頭を使って何かを考えていかなければ。だから安価で学べる地域の講座に行くようになりました。今は書道に夢中です。今後は漢文も勉強してみたいし、地元で何かボランティアもしてみたい。むりのない範囲でやりたいことを増やしていくのが、一番自分らしい生き方かなと思っています」

気力は体力を上回ると思って生きてきたが、それはさすがに無理だと思い始めたんですよと、カナコさんは笑った。

「若作りももうできないし、無理も利かない。それでも楽しい人生だったと思えるように生きていきたい。希望をなくしたら人生終わりですもんね。でも娘は『お母さんが弱ったら、私が面倒を見るから』と言うんですよ。うるさい、私の人生に構うなって言ってます(笑)」

そのカナコさんの拒否が、娘を思う優しさからきていることを、娘もきっと分かっているはず。親子であっても、それぞれの人生をそれぞれの責任で生きていくべきだというカナコさんの覚悟は深い。

「独居老人って、嫌な言葉ですよね。別にいいじゃないですか、独居だろうが孤立死だろうが。高齢者がみんな寂しく一人暮らししているわけじゃないと思いますよ。少なくとも、私は楽しい独居生活をできる限り長く続けていくつもりです」

どんなに気を付けていても、病気になることはある。それでも最後まで尊厳をもって暮らしたいとカナコさんは言った。

<参考>
・「日本人の平均寿命延びる 女性87.14歳 男性81.09歳 理由は…」(NHK)
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