家事

きれいが続く掃除テクとは? 羽田空港を9年連続「世界一清潔」に導いた“清掃のカリスマ”に聞いた

羽田空港を世界一清潔な空港へと導いている“清掃のカリスマ”新津春子さん。数々のテレビ番組に出演し、著作も多くある新津さんに、家の掃除を最高に上手にこなすテクニックを伺いました。

毎田 祥子

執筆者:毎田 祥子

家事ガイド

9年連続11回の世界一! 羽田空港の清潔を守る

新津春子さん:1970年中国残留日本人孤児二世として、中国瀋陽に生まれる。中国残留日本人孤児であった父の薦めによって一家で渡日。言葉がわからなくてもできるという理由で清掃の仕事を始めて以来, 37年以上清掃の仕事を続ける。 1995年、日本空港技術サービス(現:日本空港テクノ)に入社。97年に(当時)最年少で全国ビルクリーニング技能競技会一位に輝く。以降、指導者としても活躍し、現在は羽田空港の清掃の実技指導者に加え、同社ただ1人の「環境マイスター」として、羽田空港全体の環境整備に貢献している。 「プロフェッショナル 仕事の流儀」(NHK)では4回取り上げられた。

カリスマ清掃員・新津春子さん

羽田空港(東京国際空港)は、「The World‘s Cleanest Airports※1」で空港内の清潔さや快適さなどが評価され、2024年に9年連続11回目の世界第1位に選ばれた極めて清潔な空港です。そこで働き、受賞の功労者として知られる新津春子さんに、家の掃除を中心とした「清掃の極意」を教えていただきました。

※1)1989年創立のイギリスに拠点を置く航空サービスリサーチ会社「SKYTRAX」による世界の空港や航空会社の評価。  

“思う心”で清掃技術の日本一に

新津さんは中国・瀋陽で生まれ、学生時代は砲丸投げの選手として高い目標を達成すべく練習する日々を過ごしました。

17歳の時に中国残留孤児の父と一家5人で来日し、生活のために清掃の仕事を始め、数々の職場で技術を体得。より高度な知識を東京都立城南職業能力開発訓練センターで学んだ後、今の職場(羽田空港テクノ)に就職しました。

仕事の傍ら目指したのは、全国クリーニング技能競技会でした。特訓は職業能力開発訓練センターの恩師でもあった日本空港テクノの鈴木常務(当時)による指導のもと、仕事が終わる17時半から21時半ごろまで、毎日4時間以上行われました。

その最中、鈴木常務から言われた「もっと心を込めなさい」「心に余裕がなければいい清掃はできませんよ」という言葉で、型ややり方を超えた「物や相手を大切に思う心」に気づかされたそう。技術により一層の磨きがかかった新津さんは、1997年に最年少で全国クリーニング技能競技会で優勝しました。

掃除をするうえで大切な三つのこと

新津さんが清掃の仕事をするうえで大切にしているのが、次の三つです。

1. 笑顔 周囲を楽しませる気持ちを忘れない
2. 観察 人や物をすみずみまでよく見る
3. 道具を作った人のことを思い、丁寧に扱う


例えば、机を掃除するとき、見方を変えて観察します。すると「机の上面が『頭』に思えてきて、机の脚とのつなぎ部分である『首』もきれいにしようと思う。そうして角度を変えて観察したら、ネジの緩みが見えたり、さらに『足元』にも気づくものがあったり」と、ただ拭くだけのときとは全く違って見えてくるといいます。

家の掃除は家族だけでなく、自分のためにもなる

一方で「家の掃除」についてはどうお考えでしょうか。「必要な理由」を尋ねてみたところ、「家族みんなが健康でいるためなのはもちろんのこと、自分のためでもある」と教えてくれました。

自分が病気やけがで体が動きにくい日、散らかった部屋を見たときに「やらねばならないのにできない」ことはストレスになる。それに体調不良が積み重なれば、いつしか家中がゴミ屋敷のようにならないとも限りません。だから、そんな時期があっても大丈夫なように、日頃の掃除をしておいた方がよいというお考えです。

体調不良は誰にでもあること。仕事や育児で忙しい人や、年を重ねて体の不調が起きやすくなってきた人も、この一歩先を見据えた心がけを見習いたいですね。

次ページではそんな新津さんに教えていただいた「掃除のテクニック」をご紹介します。
 
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