今から話し合っている
「定年後も働く」だけでは、老後の生活は安泰なわけがない
そう言って苦笑するユカリさん(61歳)。2歳年上の夫の定年は2年後だが、その先も働く予定ではあるという。年金をもらうのは70歳からとふたりで決めている。
「でも病気ばかりはいつかかるか分からない。気を付けていれば病気にならないわけでもないですしね。退職金の一部は家のローン返済にあてて、ようやく完済ということになるので、年金受給を遅らせるしかない。そこまで元気でいられるかどうかが勝負だねと話しています」
夫の弟が先日、60歳で亡くなった。そのことも夫に不安とショックを与えているようだとユカリさんは言う。
「ただ、不安に苛まれて人生を送るのも嫌ですよね。ささやかな楽しみをどうやって見つけていくのか。それも私たちの課題です」
不安や焦燥感が募って、夫婦仲がぎくしゃくしたら本末転倒だ。それだけは避けたい。互いを思いやりながら暮らしていきたいと2人とも考えている。
「考えてもしょうがないよと本当は言いたいんですが、こんな世の中になると、年金だけでは生きていけない。私たちの親の世代は、年金だけでなんとかやっていけたものなのに……」
70歳を超えても働く時代をどう生きるか
何十年も働いて、日常生活を楽しむこともできない年金しか手に入らないから70歳まで働き続けるのが当たり前になりつつある。70歳を越えても働く人たちも多い。「実際に亡くなる寿命と健康寿命は違いますからね。周りを見ていても、75歳くらいが限界なのかなと思う。あとは楽しみながら余生を送るべきですよね。人として本来あるべきそういう人生を送れなくなっているのが本当に不安です」
大企業に勤めてきて、それなりに年金が充実している人より、こうした不安を抱えている人の方が多いはずだ。それでもなんとか暗くならないよう、2人きりになった夫婦は支え合うしかない。
「どちらかが心身ともに病んだりしたら、とにかく早く病院や自治体とつながっておくこと。頼ることを怖がらないこと。今はそう決めています」
どうなることやら、ですけどねと、ユカリさんは大きなため息と共に「よいしょ」と声をかけながら立ち上がった。