「ひとりになりたい」と思うことはあるだろうか。あるいは「ひとりでいるのが本当に寂しい」と孤独感を募らせたことはあるだろうか。
人によって、孤独感への耐性はかなり大きく異なるようだ。
ひとりになりたい私に「変だ」という夫
大学を出て就職、27歳で結婚したトミコさん(50歳)。当時としては早くもなく遅くもない結婚だったという。「社内結婚で、相手は2歳年上。彼は都内に実家があり、私は地方出身のひとり暮らしでした。結婚後、私も仕事を続ける選択肢はあったんですが、もともとそんなにキャリア志向でもなかったから、まずは子どもがほしいなと思い退職しました」
願い通りにすぐに妊娠、28歳で長女を、31歳で長男を出産した。意外なほど子どもへの愛情が強いことに、自分でも驚いたという。子どもべったりの母親になるつもりはなかったのに、気づいたら「子どもを幼稚園にさえ行かせたくないほど一緒にいたかった」と笑う。
子どもたちは高校、大学と進んでいく。それと同時に、トミコさんも子離れしていった。子どもの成長が何よりうれしかったし、小さいときに思い切りかわいがって一緒にいたから、あとは社会へ出すだけだと気持ちが楽になっていったという。
「ところがうちの子たちは、なかなか親離れしてくれなかった」
親離れしてくれない子に本気で困惑する母親
トミコさんはため息をついた。通常、こういう言葉を吐く母親は、「やっぱり子どもにとって母親は特別なんだろうと思う」と少し晴れがましい表情で言うものだが、トミコさんは違っていた。本当に親から離れて、自立することを望んでいたのだ。「私もすでにパートに出ていたし、せめて18歳になったら私を食事作りから解放してほしかった。毎日、食事を作ること、洗濯や掃除をすることに疲弊していました。下の子が大学に入ったとき、もう嫌だ、食事は作らない、家族全員がそろった日だけ作ると宣言したんです」
それ以来、トミコさんはパート仲間と食事をしたり、早いときは惣菜を買って帰ってひとりでさっさと夕飯をすませたりした。だが夫も子どもも納得していなかった。
「夫と子どもたちは結託して、『お母さんのごはんが食べたい。帰宅が遅くなってもお母さんのごはんがあれば、自分たちで温め直して食べたい』と宣言し返してきたんです」
平日のみ週4回ということで折り合い、トミコさんはしかたなく食事作りを続けることになった。
>一人暮らしのあのころが最高だった