夫が愛を語り合う女性「K」の勤務先へ
夫と「K」という女性は、どんな関係なのか。夫には怖くて聞けず……
「相手は夫の中学時代の同級生でした。そういえば、久々に中学時代の同窓会があるって聞いたことがあるから再会したんでしょう。再会して恋に発展したんだと思うと、いても立ってもいられなかった」
ミホさんは彼女のSNSを調べ、職場を探し当てた。SNSを見る限り、彼女も結婚しているようだった。家族の写真をたびたび載せている。だがある日の写真に「旧友と」と書いてあり、カフェでお茶している様子があった。ほんの少しだけ、相手の指がぼんやり映っていたのだが、それが夫の指だとミホさんは確信した。
「会いに行きました。その彼女に。彼女の勤務先に行って呼び出したんです。その会社は、私が憧れていた会社だったこともあり、なんだかムカムカしました。彼女は何かを予感していたのか、近くの喫茶店に案内してくれました」
セカンドパートナーで「肉体関係はありません」
うちの夫とどういう関係なの、いつから付き合っているのかと硬い表情で聞くミホさんに、その女性、カオリさんは「ただの友だちですよ」と言い切った。メッセージのやりとりを見たと言うと、「セカンドパートナーって知ってます? そういう関係です。肉体関係はありません。でもお互いに大事に思ってる」と平然と言った。
「恋愛なんでしょと言ったら、『恋愛感情のあるなしはあまり関係ないんです。セカンドパートナーだという認識なので』って。バカにされたような気がしました。そういう高等な感情はわからないでしょと言われたようで」
悔しくてミホさんは涙が出てきたという。するとカオリさんは「泣くような話じゃないですよ。彼が家庭を大事にしているのは私もよくわかってるし、私も家庭が大事ですから」と言って、「他に何かご質問は?」と言った。
「あなたの夫も、このこと知ってるのかしらと言ったら、『別に知られてもかまいません。うちの夫はそんなに心が狭くないから』と笑ったんですよ。その瞬間、カッと頭に血が上って彼女にコップの水をかけてしまった」
夫のセカンドパートナーに敗北感
するとカオリさんはそのまま立ち上がって去って行った。敗北感にさいなまれたミホさんはしばらく立ち上がれなかった。ようやく帰ろうとすると、会計は済んでいると言われた。「帰宅したら夫がもう帰っていて、子どもたちに夕飯を作っているところでした。夫はごく普通だった。彼女から連絡が入っていなかったみたいです。それもまた負けたと思った」
夫は今ではすっかり前の夫に戻っている。夏休みもめいっぱい子どもたちと過ごしていた。たまに帰宅が遅くなるときは「残業だから」と連絡が入る。だがカオリさんと会っているのではないかというミホさんの不安は払拭できない。
「セカンドパートナーって何ですか。肉体関係がなければ定期的に会って、あんな恋しているメッセージを送り合っていいんですか。それは裏切りじゃないんですか」
今の生活を壊したくない。そう思いながら、ミホさんの気持ちは穏やかではない。