人間関係

「スカイキャッスル」狂気のセレブ妻は過去の自分…高学歴エリートが娘を「洗脳し、追い詰めた」結果(2ページ目)

松下奈緒主演のドラマ『スカイキャッスル』が話題だ。超富裕層を生きる登場人物たちは、子どもの難関校合格をめざしてあらゆる手段を講じる。「かつての自分を見ているようだ」と、40代女性は苦しい記憶を語った。画像出典:『スカイキャッスル』(TVer)

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

有名私立中に合格「幸せが手に入った」と思った

子どものためと思って……

娘は、近所や親戚の間でも話題になるような「有名私立中」へ

そのかいあって、娘は有名私立中学に合格した。近所でも親戚の間でも話題になり、カヨさんは幸せの半分が手に入ったと感じた。あとの半分は、これから徐々に手に入れていくのだ、と。

「ところが娘は中学になじめなかった。成績も惨憺(さんたん)たるもので、これじゃ高校への内部進学も難しいと言われてしまいました。努力が足りないと、私は娘を責めました」

それを機に、娘は学校へ行かなくなった。叩いて起こし、無理矢理学校へと送り出したが、どこかでサボっているらしい。どうしたらいいかわからなかった。カヨさんがパニックになりかけているとき、娘が自室で手首を切った。

「夫が見つけたんです。夫は学校へ行かないことも容認していて、それで毎日、私たちは怒鳴り合いの状態だった。夫は夫婦げんかが娘に悪影響を及ぼすのではないか、娘とちゃんと話してみようと夜中に娘の部屋へ行って、倒れているのを見つけたんです」

娘の一大事でも「近所にバレないか」が心配だった

夫が救急車を呼んでいるときでさえ、彼女は「近所の人に知られたくないという思いでいっぱいだった」と言う。今思えば、娘のことなど何も考えていなかった、と。

娘のケガはたいしたことはなかったが、「消えたい」思いは本物だった。

「病院で娘が目覚めたとき、小さな声で『ママ、ごめんね』と言ったんです。それを聞いて、自分がどこまで娘を追いつめていたのか、初めてわかりました。生きていてよかった、とも思った。それ以上のことは望まないと。この子が産まれたときから、私は間違った方向に歩いてきたんだと。自分の夢を託すのは間違っていたとはっきりわかりました」

娘は私立中学を退学、地元の公立中学に転校した。周りとなじめるか心配していたのだが、すぐに友だちもでき、クラブ活動も始めた。小さいときからバスケットボールをやってみたかったのだという。

「運動なんて危ないからとあまりやらせなかったんです。娘がバスケットが好きだなんて知らなかった。私は運動神経がまったくないタイプなんですが、娘はめきめきとバスケが上手になった。夫はオレに似たんだって喜んでいました。夫もバスケをしていたそうです。それも知らなかった」

夫と娘はバスケットを通じて、深く心を通わせていった。

「私は娘を追いつめた負い目があって……。娘は今、高校3年生です。目指すところがあるようで、それなりに受験勉強をしていますが、今でもふと、いい大学を目指せるのではないかと思ってしまう自分がいます。10数年をかけて託してきた夢から、私自身が離れられない。娘のためと言いながら、やっぱり自分のためでしかなかったのは、認めざるを得ませんが」

「きみの幸せが娘の幸せ、なのではなく、娘の幸せが自分の幸せなんだよ」

夫にそう言われたことを忘れないようにします、とカヨさんは少しだけ不服そうな顔になった。
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