今度は夫の親に認知症の気配が……
父に施設に行くよう説得していた昨年秋、今度は夫の両親に問題が起こった。義父が転倒して骨折、入院治療している間に、やはり認知症の気配が出てきたのだ。「義母は義父がいないと何もできないタイプ。夫はひとりっ子なんです。相談できる親戚もいないため、夫は週末を使って実家へ戻り、今後のことを段取りしてきたと言っていました」
ところがその後、義母が近所の人の宗教がかった投資話にはまってしまい、気づいたときは貯金もほとんど切り崩していた。老後、何かあったときのためにと貯めていた1000万円を貢いでしまったらしい。
「その近所の人を探したけど、すでにどこかに越したあと。もともと義母が仲良くしていた人でもなかったらしいんです。ダンナさんの病気が治るよとか、この健康食品で認知症はよくなるとか言われたようです。詐欺だと思うんだけど、義母に騙された気持ちがないみたいで……」
夫がいない不安と寂しさで、義母は精神的なバランスを欠いていたようだ。義父はそのままリハビリ病院に転院が決まったため、義母のひとり暮らしはさらに続きそうだった。
「今年のお正月明けに、夫が『おふくろを引き取ろうと思う』と言うんです。ちょうどそのころ、うちの父が母を外まで追いかけ回して近所の人にまで暴力をふるうという事件があったので、私も父と母を別居させなければダメだと思っていた。うちもこういう状況だし、あなたがおかあさんを引き取るなら、私だって母を引き取りたいと言いました」
ただ、ワカコさん一家はマンション住まいで、余分な部屋などない。どちらかひとりだって引き取れないのが現状だとふたりとも気づいた。
「いざとなると、ふたりとも『うちの親のほうが大変』と言い合ってしまう。一時期諍いが増え、娘が泣いて止めたこともあるんです。その後、夫はしばらく会社近くのホテルに泊まると家をあけました。それでお互いに冷静になれたような気がします」
互いの両親が要介護状態になったらどうする
最優先は「この家庭だよね」と一致した。そのために親のことは協力しあって最善の道を探ろうということになった。「結局、父は春から施設に預けました。母はひとりで暮らすようになって、生き生きしています。義父はなんとかひとりで歩けるようにはなったので、家に戻ってヘルパーさんに来てもらいつつ自宅療養しています。義母が張り切りすぎて、つい先日倒れたりもしましたが、義父母はなるべく夫婦一緒にいるのがいいみたいです」
高齢になってから引き離したほうがいい夫婦、一緒にいたほうがいい夫婦に分かれるのかもしれない。いずれにしても現役世代は、自分たちにとって最優先事項を把握しておいたほうがいいのだろう。人生100歳時代と言われるが、100歳で自活している人などごくごくわずかなのである。