亀山早苗の恋愛コラム

サレ妻は夫を「許せない」のか「許さない」のか?『夫の家庭を壊すまで』松本まりか狂気の意味(2ページ目)

ドラマ『夫の家庭を壊すまで』で、主人公が何度も「許せない」というのが気になった。夫に浮気をされた時、自分の価値観として「許さない」のか、他から借りてきた価値観で「許せない」のか、1文字違うだけで、その中身はだいぶ違う。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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許したくても許せない

「私の場合、夫の不倫が発覚したのは臨月の頃でした。妊娠中に、夫はしれっと不倫していた。しかも相手は私がかわいがっていた職場の後輩。一番信頼していたふたりに裏切られて、本当にショックでした。ショックのあまり産気づいたんです」

サラさん(40歳)は、6年前の記憶を思い出して顔を歪めた。後輩のミナさんは、産休に入ったサラさんに「ここだけの話だけど、私、サラ先輩のダンナさんと付き合ってるの」というメッセージを送ってきた。どうやら友人に送るはずだったのを誤爆したらしい。

サラさんが読み終わった瞬間、メッセージは取り消された。

「どうしたの、悪い冗談はやめてよねと軽い感じで送ったのに返信は来ませんでした。ミナはよほど慌てたんでしょう。だから怪しいと思った」

その晩、夫のスマホを調べた。ミナさんとのやりとりが出てきて、関係があるとわかった。夫は軽い調子で「ミナと僕の子もほしいね」などと書いていた。

「あまりにゲスで吐き気がしました。そのまま私は産気づき、夫が起きないのでひとりでタクシーを呼んで病院に行ったんです」

正期産より少し早かったが、元気な男の子が生まれたのは1日半後という難産だった。だがその間、不倫がバレたのがわかったのか夫はやって来なかった。夫の両親は遠方に住んでいるのだが、出産と同時くらいに駆けつけてきた。サラさんの両親は出産前に到着していた。

「当然、夫はどうしたのかという話になりますよね。陣痛の合間に、両方の両親がいる場で、夫が不倫したと暴露しちゃいました。夫がようやくやってきて『仕事が……』と言い訳したときには義父が夫を殴っていました」

病院が修羅場に

なんともすさまじい修羅場と化したとサラさんは苦笑する。その後、いろいろあったものの夫はサラさんに謝罪、義父母までもが謝ってくれた。

「義父母に謝ってもらう理由はないので、かえって申し訳なくて。夫が、子どもも産まれたのだからやり直そう、絶対にいい夫、いい父親になると約束してくれたので、そのときは水に流そうと決めました」

ところが子どもが1歳になったころ、再び夫の様子がおかしくなった。またも携帯を覗いてみると、ミナさんとの関係が続いているとわかった。脇の甘い夫である。

「子どもには本当にいい父親だったから、許したいと思いました。許さないまでも、スルーしようと。でもやっぱりなかったことにはできない。『今もミナと続いているのね』とある日突然言ったら、夫はビクッと体を震わせた。顔がひきつっていました。私をバカにするのもいい加減にしてと叫びました。そうだ、私はバカにされたくなかったんだと、自分の本音に気づきました」

それからは一気に離婚へと突き進んだとサラさんは言う。許したつもりでも、裏切りが続いていたとわかった瞬間、「私の仏心は消え去った」そうだ。どう考えても「許すことができない」という意味での「許せない」だった。

許すのか、許さないのか許せないのか。その基準は人それぞれ。自分の本音に気づくことが大事なのかもしれない。
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