円安と物価高への対応は
「円安による物価高がどれくらい続くかとても不安です」(37歳・女性)
と感じる方も多いようです。そこで本記事では、「円安による物価高がどれくらい続くのか?」について筆者の見解をまとめます。
そもそも、なぜ円安なのか?
本題に移る前に、そもそもなぜ円安になったのかについて考えてみましょう。筆者は、大きな理由は以下の2つが重なったためと認識しています。
1つは日本の政策金利が極めて低いことです。
日本の政策金利は0.25%で、これは物価の上昇率よりも低い数字です。乱暴な言い方をすると、借金をして何かを買ってインフレに便乗するほうが得をできる環境です。
たとえば、2~3%くらいの金利で銀行からお金を借りて、利回り5~6%の不動産に投資をするとか、配当利回り4~5%の株式に投資することができてしまいます。借金するだけ得になるということです。
普通ならこんな環境が続くと物価が暴走します。2022年には、アメリカやヨーロッパなど多くの国でインフレ率が異常に高くなりました。これは、コロナ危機のときに世界中が大規模な金融緩和を行ったからです。
はっきりとした理由は分かりませんが、なぜか日本は諸外国と比べるとインフレがマイルドです。しかし、金融緩和が行き過ぎるとインフレが暴走しかねないことは、頭の片隅に入れておくべきでしょう。
もう1つは海外の政策金利が高いことです。
インフレの暴走を抑えるため、アメリカを始めとする外国の政策金利は高いです。アメリカの政策金利は5.5%ですし、隣国の韓国の政策金利は3.5%です。
国内外で金利差が広がると、別の問題が生じます。「金利の低い日本円で融資を受けて、金利の高い外国の国債を買って金利差で儲けよう」という取引が広がるからです。これを、キャリー・トレード(キャリー取引)と言います。
足元の円安は、このキャリートレードの影響も大きいと言われています。
円安による物価高がどれくらい続くのか?
円安の原因が分かったところで、本題へ移りましょう。円安による物価高は、どれくらい続くのでしょうか。
円安がいつまで続くか、はっきりとした日時を言い当てることはできません。その代わりに、「何が起きると円高になるか」というストーリーを思い描くことは可能です。
円安が終わるとすれば、先に触れた円安の原因がなくなったときです。可能性があるとすれば、(1)日本銀行が政策金利を引き上げるか、(2)諸外国が政策金利を引き下げるか、のどちらかでしょう。
1つ目が、日本銀行が政策金利を引き上げた場合です。
2024年7月末、日本銀行はやっと政策金利を0.25%に引き上げました。おそらく円安を嫌っての利上げでしょうが、この調子でどんどん金利を引き上げるなら、円安が一段落して、円高が進む可能性があります。
2つ目が、諸外国が政策金利を引き下げた場合です。
2024年6月上旬、欧州中央銀行(ECB)が政策金利を4.5%から4.25%に引き下げました。ヨーロッパと日本の金利差が縮まったことで、ユーロ円の円安基調は和らぎそうです。
まだアメリカは利下げしていませんが、景気に減速兆候が見られたときには利下げするでしょう。そのときには、円安が落ち着き、円高が進みそうです。
いずれにせよ、金利差が縮まることで、円安が止まる可能性があります。ただし、金利差が再び広がる兆しが見られた場合、円安がさらに進む可能性があると頭の片隅に入れておきましょう。
円安による物価高への対策
さいごに、円安による物価高に備えるために、何ができるか考えてみましょう。インフレに備える有効な手段は、(1)株式を買って配当収入を受け取る、(2)不動産を買って家賃収入を受け取る、(3)国債を買って利息収入を受け取る、(4)純金を買って資産価値をインフレに連動させる、といった方法が考えられます。
(1)と(2)……株式と不動産は、資産評価額が景気と連動する傾向があります。つまり景気が良いときには儲かりますが、景気が悪くなると損をする恐れがあります。
(3)と(4)……国債と純金は、資産評価額が景気と連動しにくいです。景気が良くても儲けにくいですが、景気が悪くても損をしにくいと想定できます。
どの方法でインフレに備えるかは人それぞれですが、筆者は「当面、日本の景気は良いだろう」と考えて株式を多めに保有しています。景気の見通しが悪いと考えるなら、国債金利が低いので純金を買うのが良い気がします。
「景気がどう転ぶか分からない」という方は、それぞれの資産を両方とも持つことで、どちらのシナリオにも備えることもできるでしょう。
まとめ
円安による物価高が続いて、「貯金の価値が目減りしてしまうのでは」と心配になる方は多いでしょう。為替レートは政策金利の影響を強く受けます。国内外の金融政策を見守りつつ、上手にインフレに備えたいですね。