「もし大きな地震が起きた場合、株価はどうなりますか? 上がることもあるのでしょうか?」(34歳)
そこでこの記事では、上の質問に対する筆者の考えをまとめます。
大地震で、株価はどうなる?
地震が株価へ与える影響を知りたいなら過去の経験則を知るのがヒントになります。ここでは筆者の経験した東日本大震災を例にとって考えてみます。 東日本大震災が起きたのは、2011年3月11日(金)の14時46分ごろでした。株式市場の取引時間は平日9時~15時で、「週末の取引時間終了まぎわ」に大きな地震があり、株式市場は混乱しました。地震のあった当日は、市場参加者が株を売る時間がなかったため、あまり株価は下がりませんでした。
市場参加者が株を売るに売れない中、状況は日に日に悪化していきました。特に大きなニュースとなったのが、福島第一原子力発電所の事故です。当時は、「放射性物質が漏れた」という噂が日本中で広まり、海外に逃げる人も出たという話もありました。
それまで東京電力<9501>は「手堅い投資先」として知られていましたが、原発事故が原因で、半年も経たずに株価が10分の1まで下がりました。大震災が起きる前、東京電力の株価は2000円を超えていましたが、10年以上たった今でも、株価は600円ていどで、元に戻っていません。
ほかにも、東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランド<4661>の株も大きく下がりました。東日本大震災の影響で駐車場が液状化して、埋立地のリスクが意識されたからだと思います。
東京電力に限らず、日本株全体が売られました。当時、日経平均株価は1万円前後で推移していましたが、震災直後は8000円台まで下がりました。
大地震で上がった株は?
筆者自身の話をすると、私は当時大学2年生でした。このときはすでに株を始めて2年が経っていて、すこしずつではありますが資産が増えていました。しかし、震災後の暴落で、2年かけて増やした資産が、あっという間に吹き飛びました。投資をはじめてお金を増やし、そこそこ自信を持っていたのですが、たった1つの出来事で2年間の苦労が吹き飛んだときは、あっけに取られてしまいました(結局、しばらくして株価は元に戻ったので、私の利益は守られたのですが……)。
良くも悪くも、東日本大震災が起きたのは「金曜日の取引終了直前」でした。なので、「休日明けに、いま持っている株を処分するべきか、買うとしたらどんな買うべきか」を土日の時間にゆっくりと時間をかけて考えることができました。
当時、筆者は「地震で壊れた建物や道路を修理するために、建設会社や、土木の会社が伸びるんじゃないか」と考えました。週明けは実際、ゼネコンやセメントなどの株が買われていました。
また、幸運なことに筆者の投資先はほとんど地震の影響を受けませんでした。なぜかというと、ソフトウェア開発などを行う新興企業に投資していたからです。デジタル世界は地震の影響を受けにくいことから、パニック売りが落ち着いた頃には、すでに株価は元に戻っていました。
当時を振り返ってみて……
筆者の場合は「運が良かった」だけですが、この経験をきっかけに「地震に強い資産配分」をする必要があると痛感しました。いま筆者が資産を配分するのであれば、「日本以外に大きな設備が分散されている会社に投資しよう」「原発などのテールリスク※が大きな企業への投資はやめよう」「国内に設備がある会社に投資する場合は、可能なら沿岸や山の近くに大きな施設があるところに投資をするのはやめよう」といったことを配慮するようになりました。
※確率は低いが、発生すると大きな損失をもたらすリスクのこと
それと同時に「株価の動きに振り回されず、きちんと現実をみて投資判断を下すこと」の大切さも実感しました。
たとえば、先に挙げたオリエンタルランドは震災後に株が売られましたが、その後負傷者が一人も出なかったと分かったのです。
大きな地震があっても負傷者を出さず、お客様を守ったのです。あれだけ大きな地震が起きたのなら「アトラクションの1つでも壊れてもおかしくない」と思ったのですが、そういう事故も起きなかったと認識しています。
このことに筆者はいたく感動しました。筆者はまだ駆け出しの投資家で資金も足りず株を買えませんでしたが、このときは「いまこそオリエンタルランド株の買い場だ」と感じたものです。あのときに株を買っていれば、いまでは10倍になっていました。チャンスを逃し、もったいないことをしました。
日本は地理的な性質上、大きな地震は「必ず」来ます。「どうせ来ない」と高をくくるのではなく、大きな地震が起きることを前提に置くのが大切だと考えます。
地震の影響の少ない会社を選んだり、仮に影響の大きな会社を選ぶのであれば、逆に地震のおかげで業績が伸びる会社と「抱き合わせ」で投資するなりして、うまくリスクを分散するのが大事だと考えています。