まだ著作権が切れていない国でも上映している
プーさんのホラー映画は、映画データベースの「IMDb」で調べると、原作小説の著作権が切れているアメリカ、カナダや日本のみならず、まだ著作権が残っているはずのヨーロッパ各国でも上映されています。ヨーロッパ各国では、イギリスを含むほとんどの国が著作者の死後70年間を保護期間としているため、プーさんの原作小説『クマのプーさん』の原作者ミルンが亡くなった1956年から70年後の2026年末まで、著作権が切れずに残っています。
それなのに、プーさんがまだパブリックドメインとなっていないヨーロッパ各国でもプーさんのホラー映画が上映されていることには、筆者は首をかしげます。
ここまで大幅な改変は少なくとも日本では許されないのでは
もう1つ、プーさんのホラー映画には疑問点があります。アメリカ以外の多くの国では、著作者の死後も著作者の意に反する改変は禁止されている場合が多いです。少なくとも日本では、著作権法60条により、著作者が亡くなった後であっても、著作者が生存しているとしたならば著作者の意に反するような改変をしてはならないとされています(この規定はパブリックドメインにも適用されると解釈されています)。
プーさんの原作小説を改変してホラー映画にすることは、原作小説の著作者であるミルンが生存していたならばその意に反する改変に該当する可能性があるため、ミルンの遺族(日本だとミルンの配偶者、祖父母、父母、兄弟姉妹、子、孫まで)が日本でこの著作権法60条を主張して、プーさんのホラー映画の上映差し止めなどを裁判所に求めることも可能ではないかと考えられます。
第2作が公開された現在までに、ミルンの遺族が何らかのアクションを取ったという報道はありませんが、このプーさんのホラー映画は、上記のようなグレーな部分を抱えながら公開されていると言えます。
それでもなお続く名作のホラー映画化
先述のように、パブリックドメインになったとしても、ホラー映画化するという大幅な改変は認められない国もあるのではという疑念はあるものの、パブリックドメインをホラー映画化するという流れは年々加速しています。今回のプーさんのホラー映画の制作陣は、近年パブリックドメインとなった『バンビ』や『ピノッキオの冒険(ピノキオ)』のホラー映画化を検討しているようですし、今年の10月25日には、『シン・デレラ』という、こちらもパブリックドメインとなっている『シンデレラ』のホラー映画が日本でも上映されます。
映画『シン・デレラ』 ※画像出典:映画『シン・デレラ』公式サイト
こういった有名なキャラクターが今後パブリックドメインとなっていく中で、これらのキャラクターがその後どのような利用がされるのか、今後も目が離せないところです。