人間関係

パリ五輪の「感動した」合戦に辟易…勝敗が当たり前のスポーツに“情を絡ませる”手法はどうか(2ページ目)

パリ五輪の開催期間中とはいえ、世の中が五輪の話題一色になるわけではない。受け止め方にはそれぞれに温度差があり、テレビ観戦をきっかけにトラブルが勃発する家庭もあるようで……。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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五輪観戦が大好きな夫にドン引き

「私もスポーツは好きだけど、オリンピックの雰囲気はあまり好きじゃないんですよね。でも夫は大好き。今の時期は帰宅すると五輪観戦ばかり。録画したものも必死で見ている」

ケイコさん(43歳)はうんざりしたような表情でそう言う。今、家庭内は微妙な雰囲気に包まれている。ことの発端は開会式だった。

あとから家族で、開会式の模様を録画を見たのだが、「フランスらしいといえばフランスらしい。やっぱりこの国は革命で市民自らが自由をつかみとったからね」とケイコさんが言ったことに夫がかみついたのだ。

「夫は趣味の悪い開会式だと、文句を言っていました。私、かつてフランスに2年ほど留学していたことがあるんです。だから彼らがどれだけ自由を尊んでいるかはわかっているつもり」

開会式の話題から夫のフキハラ炸裂

「ところが夫は、開会式のことではなく、なぜか私の留学経験にケチをつけた。『ああ、どうせきみはフランスに住んでいたって自慢したがるんだろ』って。そういう話はしていないでしょと口論になってしまって。夫は多分、自分が留学したかったのにできなかったからコンプレックスと妬みがあるんだと思う。だから普段はそのことを言わないようにしているんですけど」

開催地のパリにからんで夫のコンプレックスが炸裂したのだろう。その後も開会式の話で、夫はぐちぐちと文句を言ったあげく、「オレはフランスが好きじゃないな」と言い出した。

行ったこともないくせにと思いながら夫の顔を見ると、夫は「どうせオレは留学経験がないよ」と吐き捨てるように言った。

「誰もそんなことで責めてないのに、なんでひとりでひねくれてるわけ?と私もつい語気が荒くなって……」

ふたりとも、子どもたちに聞こえてはまずいと口をつぐんだ。ケイコさんは夫の心の狭さに驚くばかり。夫もなにやら不機嫌なままで、ひとりで相変わらずせっせと五輪を見ているが、子どもたちは別の部屋のテレビを見ている。

「リビングのテレビを見ているのは夫だけ。こっちで見ろよとも言わなくなったし、パリ五輪の話題も家族間では出なくなっています。意外なところに地雷があった。五輪が終わるまで、こんなフキハラに耐えないといけないんでしょうかね」

思わぬ不和にケイコさんは疲れたような表情になった。
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