実際に実父から7年にわたって性的虐待を受け続け、今は自分も母となった女性が「気持ちを整理したい」と過去に経験したことを話してくれた。
私が11歳のころ、母親が入院した
ノリコさん(39歳)によれば、彼女を「性的なおもちゃ」にしていたのは実父であった。会社員の父とパート主婦の母との間に長女として生まれたノリコさんには、4歳違いの妹がいる。「私が11歳のころ、母が病気で入院したんです。当時、私は知らされていなかったけど子宮がんだったそうです。手術のときは2週間前後、その後も治療のために何度か入院していました。父の態度が“おかしく”なったのは、最初の手術のために母が入院のときです」
もともと仲のいい一家だった。父は母が大好きで、母はそんな父を甘やかし、子どものように世話を焼いていた。
「母ががんだと知ったとき、父は相当落ち込んだのだと思います。入院して家の中に母がいなくなったのも想像以上につらかったんでしょう。
普段は家事などしないのに、頑張って娘ふたりに料理を作り、まだ1年生だった妹の育児をして、父は父なりに大変だったのかもしれない。母の手術があったその日、父は会社を休んで病院に詰めていました。私は普段通り学校に行って、帰宅すると父がいたんです。手術は無事に終わったと、ホッとした顔でした」
父にぎゅっと抱きしめられて……
父を手伝って夕飯を作り、3人で食べて妹を寝かせた。父はリビングでぼうっとしていたという。ノリコさんに気づくと手招きをした。「そばにいくと、父にぎゅっと抱きしめられました。そのくらいのことはよくあったのですが、気づくと父が私のスカートの中に手を入れていたんです。私はすでに生理がありましたから、ある程度の知識もあった。
やめてよと言ったら、『お願いだからパパを慰めて。ノリコだけが頼りなんだ』と。嫌なのに、なんだかかわいそうな気がして突き放せなかった。母がいないから私が母の代わりをするしかないと思ってもいた。長女の性(さが)なんですかね」
ノリコさんはそう言って自嘲的な顔になった。断れなかった自分を憎むような蔑むような表情だ。
「体中をまさぐられて、全身が固まりました。怖いというより、いつも優しい父がどうしてこんなことをするのだろう、でも、私が父の寂しさを埋めることになっているなら、それでもいいのだろうか……と、いろいろなことが脳内をめぐっていた」
それでもやはり「嫌」だった。母が退院するまでの間に数回そんなことがあったが、退院してきた母にはなにも言えなかった。
>母が入院するたび、エスカレートしていく父