なぜ私が毒親の介護を?
「私の両親はいわゆる“毒親”です。将来、介護をするのがイヤでイヤでたまりません」今回、介護の悩みを打ち明けてくれたのはカズコさん(仮名/50代女性)。彼女の両親は子どものころから1つ年下の弟にばかり愛情を注いできたと言います。
「長男教の両親は私が子どものころから『お姉ちゃんなんだから』と我慢させてばかり。結婚したときも、家を買ったときも、弟にだけ資金援助をしています」
そんな両親は最近体が弱ってきたそうで、この先の介護の話になると「介護は女のお前にやってほしい」と言っているとのこと。
「弟ばかりをかわいがってきた、自分にとっては『毒親』である親の介護はしたくありません。どうにか逃げる方法はないのでしょうか」
たとえ「毒親」だとしても
カズコさんのように、生まれてから今まで親に愛された記憶がないのに、どうして私が介護をしなければいけないのかと悩む人は少なくありません。男児だけをかわいがる家庭、いわゆる長男教は昔ながらの考え方として今も存在しています。一家の跡継ぎとして長男はちやほやされ、その周りにいる女きょうだいは「お前は長男を支えなければいけない」と冷遇される傾向にあります。きょうだいの扱いに差がある親は決して珍しくありません。
そんな親の介護を子どもは放棄できるのか。実は実子である以上は親の介護に対して一定の責任が伴うため、たとえ親が「毒親」だとしても、全く介護をしないというわけにはいきません。
ただし、おむつを交換したり車いすを押したりなど子ども自ら体を動かして介護をするのではなく、介護サービスが使えるように手配をしたり、親のお金から必要な支払いができるように手続きをしたりするだけでもいいのです。
必要最低限の負担で済むように布石を打ちましょう。
まず話し合うべきは
カズコさんの場合は、まず弟に連絡を取って介護の役割分担について話し合うのが大切です。「長男としてかわいがられてきた自分が、ある程度責任を負って頑張っていこう」と思っているのか、あるいは「親から言われないのをいいことに、これ幸いと姉にすべてを押し付けようとしている」のか、弟の本音を把握したいところ。もしも弟に介護をする意思がないのであれば、保護責任者遺棄罪の対象になる旨を伝えましょう。先ほども申し上げましたが、実子である以上、親の介護に一切関わらないということは法律上できないのです。
また、介護費用の負担や相続についてもセットで話し合い、互いに決めたことは公証役場で「親族間扶養公正証書」として文書化するのがおすすめ。「身内なんだから口約束で十分」なんて甘い考えは捨てて、しっかりとした書類に残して逃げ場をなくしておかないと、ずるい人ほど早く逃げていってしまいますよ。
最後に、早めに主治医や地域包括支援センターに相談して、いざというときの支えを作っておく大切さを伝えましょう。
親が元気なうちから相談しておけば、何かあったときに相談しに行きやすい関係性を作ることができますし、守ってもらいやすくなるかもしれません。介護を自分たち素人だけで何とかしようと抱え込まずに済むというわけです。
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