2つのアイマスクを見比べると
・花王「めぐりズム 蒸気でホットアイマスク」花王登録意匠:第1330629号 ※画像出典:特許情報プラットフォーム
・アイリスオーヤマ「モイスクル じんわりホットアイマスク」
アイリスオーヤマ「モイスクル じんわりホットアイマスク 無香料」 ※画像出典:アイリスオーヤマ公式サイト
ぱっと見ると「似ている」という印象を抱くのではないでしょうか。
しかし、アイリスオーヤマの「モイスクル じんわりホットアイマスク」が、花王の「めぐりズム 蒸気でホットアイマスク」に関する意匠権を侵害していると言えるほどに類似しているかというと、実際のところ法的には判断が難しいところです。
なぜなら、それぞれの形状を見比べてみると、アイマスク部分でとりわけ相違点が見受けられるからです。
花王の「めぐりズム 蒸気でホットアイマスク」に関する意匠(デザイン)は、アイマスク部分が丸みを帯びている印象ですが、アイリスオーヤマのアイマスク部分は丸みが抑えられており、アイマスク部分の上下がやや直線状になっているような印象を受けます。
意匠の類似判断は、要部(意匠を見る者の注意を強く引く部分)を比較して判断されることがあります。要部が「アイマスク部分」であると裁判所が判断した場合、両者は非類似と判断される可能性もあるのではと考えられます。
そのため、花王の主張を東京地方裁判所が認めるか否かは、不透明な部分もあります。
今後の展開は
花王の「めぐりズム 蒸気でホットアイマスク」に関する意匠は、2007年5月31日に特許庁に出願された後、2008年4月18日に登録されているため、登録日から20年後の2028年4月18日まで権利期間が続くことになります。アイリスオーヤマが上記のアイマスクを販売開始したのは比較的最近ですが、アイリスオーヤマにも知的財産部があるので、花王の意匠の存在を把握した上で商品デザインを決めていた可能性は考えられます。
ゆえに、先述したアイマスク部分の見た目の相違点を主張するなど、今後アイリスオーヤマからの反論も考えられるところです(執筆時点では「訴状が届き次第、内容を確認し会社としての対応を検討いたします」とのコメントがあるのみ)。
今回花王が行った販売など差し止めの申し立てにより、ドラッグストアなど販売店が、問題となっているアイリスオーヤマのアイマスクの仕入れを控える、などといった動きが生じる可能性があります。
このような意匠権を巡る問題により、ある日突然、私たちが買っていた商品が店頭から姿を消すということもあります。意匠権は、実は私たちの生活に身近な権利のひとつでもあるのです。
<参考>
・花王「アイマスクに関する、アイリスオーヤマへの意匠権侵害差止仮処分命令の申立てについて」
・NHK「花王 アイリスオーヤマのアイマスク販売差し止めを申し立て」2024年7月9日