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花王「めぐりズム」のデザインを巡ってアイリスオーヤマを提訴…争点の「意匠権」とは【弁理士が解説】

花王の「めぐりズム 蒸気でホットアイマスク」のデザインに類似しているなどとして、花王がアイリスオーヤマにアイマスクの販売差し止めを求めて提訴しました。この問題の争点、私たちの生活に与える影響などを含めて、分かりやすく解説します。※サムネイル画像出典:My Kao Mall

藤枝 秀幸

執筆者:藤枝 秀幸

弁理士ガイド

花王「めぐりズム 蒸気でホットアイマスク 無香料 12枚入」 ※画像出典:My Kao Mall

花王「めぐりズム 蒸気でホットアイマスク 無香料 12枚入」 ※画像出典:My Kao Mall

花王が販売する「めぐりズム 蒸気でホットアイマスク」は、目に心地よい蒸気を与えるアイマスク商品として、2007年に販売が開始されました。以降、長年販売されている「めぐりズム」シリーズの商品は、一度は使ったことのある人も多いのではないでしょうか。

そんな「
めぐりズム」のデザインを巡って、先日、花王がある申し立てを行ったとして注目を集めました。
 

花王のめぐりズムとアイリスオーヤマのアイマスクが……

花王は、生活用品メーカーの「アイリスオーヤマ」が販売している「モイスクル じんわりホットアイマスク」シリーズのデザインが、花王の商品「めぐりズム 蒸気でホットアイマスク」のデザインに類似しているなどとして、2024年7月2日付で、アイリスオーヤマの対象商品の販売などの差し止めを東京地方裁判所に求めました(仮処分の申し立て)。

花王が販売などの差し止めを求めた商品は、アイリスオーヤマが販売している以下の4商品です。

・モイスクル じんわりホットアイマスク 5枚入 無香料
・モイスクル じんわりホットアイマスク 10枚入 無香料
・モイスクル じんわりホットアイマスク 5枚入 ラベンダー
・モイスクル じんわりホットアイマスク 10枚入 ラベンダー 

アイリスオーヤマ「モイスクル じんわりホットアイマスク 無香料 5枚入り」

アイリスオーヤマ「モイスクル じんわりホットアイマスク 5枚入 無香料」 ※画像出典:アイリスオーヤマ公式サイト

アイリスオーヤマの4商品は、Amazonでの取り扱い開始日を見ると、「2024年3月12日」となっており、比較的最近に販売を開始した商品であるように見受けられます。販売開始からわずか数カ月程度で裁判所に販売差し止めを求めた今回の花王の動きは、相当速いといえそうです。花王が常日頃から他社の商品動向を詳しくチェックしているのではと考えられます。

なお、アイリスオーヤマが販売する4つのアイマスクが、花王の「めぐりズム 蒸気でホットアイマスク」のデザインと似ていることでどのような法的問題があるかというと、「めぐりズム 蒸気でホットアイマスク」について花王が保有する「意匠権」を侵害しているかどうかという問題です。

意匠権とは、「新しく、かつ創作することが容易ではないデザイン」を創作した場合に、特許庁に出願し、特許庁による審査を経て意匠登録されることで与えられる独占権のこと。著作権とは異なり、登録されることによって初めて与えられる権利です。

意匠権は商品などのデザインに関する独占的な権利なので、他社の同種の商品などに、同じデザイン、または類似するデザインのものがあれば、その販売などを差し止めることができます。


例えば、私たち一個人が、花王の「めぐりズム 蒸気でホットアイマスク」のデザインを真似て商品を作って販売した場合も、花王の意匠権を侵害していることとなり花王から訴えられる可能性があります。

もしも意匠権を侵害していると認められた場合は、問題となっている商品の販売停止や商品回収のみならず、損害賠償請求を受けることや、刑事罰(10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金)を受ける可能性も。

今回、花王は意匠権に基づきアイリスオーヤマのアイマスクの販売差し止めを求めたわけですが、意匠権は、見た目に関する権利ですので、実際に問題となっているそれぞれのデザインを見比べてみたいと思います。

>次ページ:花王とアイリスオーヤマのアイマスクを見比べると
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