年金・老後のお金クリニック

夫は勤務医で収入が高いので、勤務し続けるのと退職して繰り下げするのとどちらが年金は多くなる?

老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に、専門家が回答します。今回は、勤務医の夫がいる人からの質問です。年金についての質問がある人はコメント欄に書き込みをお願いします。

拝野 洋子

執筆者:拝野 洋子

ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士 / 年金・社会保障ガイド

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老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に、専門家が回答します。今回は、勤務医の夫がいる人からの質問です。年金についての質問がある人はコメント欄に書き込みをお願いします。

Q:夫は勤務医で収入が高いので、勤務し続けるのと退職して繰り下げするのとどちらが年金は多くなる?

「夫は勤務医で収入が高いので、65歳からの年金は全額カットされそうです。先輩の先生方には、退職して病院と業務委託契約をして働く方と、退職せずに働き続ける方がいらっしゃいます。65歳から70歳まで厚生年金に加入しての増加分と、退職して70歳まで繰り下げた場合の増加分はどちらが多くなりますか。夫の年金額は月額20万円くらいの予定です」(みかんさん)
収入が高い夫、年金はどう受け取る?

収入が高い夫、年金はどう受け取る?

A:家族の年齢や夫の寿命を考慮せず、年金額をできるだけ多くもらうのであれば、65歳で退職し、業務委託で働きながら65歳から老齢厚生年金のみ受給し、70歳まで老齢基礎年金のみ繰り下げするといいでしょう

60歳以上の人が厚生年金に加入しながら働き、老齢厚生年金を受け取る場合に、年金月額と総報酬月額相当額の合計に応じて、老齢厚生年金の一部または全額が支給停止となる仕組みのことを在職老齢年金制度といいます。

ただし在職老齢年金制度で支給停止となるのは、老齢厚生年金のみで、65歳以降はどんなに高給で厚生年金に加入し続けていても、老齢基礎年金だけは受給することができます。

老齢基礎年金と老齢厚生年金(在職老齢年金制度で支給停止となった老齢厚生年金と加給年金は除く)は66歳以降の受け取りに繰り下げることができます。繰り下げると1カ月0.7%(1年で8.4%)が増額します。老齢基礎年金と老齢厚生年金は、同時に繰り下げ受給することも、別々に繰り下げ受給することもできます。基本的に繰り下げ受給した年齢から12年以上長生きすれば、繰り下げたほうが年金受給額が多くなります。

ただし、老齢厚生年金を繰り下げすると、年下の配偶者がいる場合に一定の要件を満たすと老齢厚生年金に上乗せしてもらえる「加給年金」をもらえなくなってしまいます。その点には注意しましょう。

以上の点を踏まえて、できるだけ年金を多く受け取る方法について考えてみます。

夫が65歳以降70歳まで厚生年金に加入して働き、70歳まで年金を繰り下げると、加給年金がもらえなくなる

夫の方の老齢厚生年金の月額と報酬額、夫婦の年齢差が分からないのですが、以下のような設定で考えてみます。

・夫は65歳以降、月額65万円の報酬で厚生年金に加入して働く
・夫の老齢厚生年金は一部支給停止となり、65歳から老齢基礎年金6万円、老齢厚生年金1万円の合計7万円(年額84万円)の老齢年金を受給する
・夫は70歳まで老齢基礎年金・老齢厚生年金を繰り下げる
・妻が3歳年下で加給年金の対象となる配偶者である


老齢基礎年金・老齢厚生年金を両方、70歳からの受け取り開始としますから、1年で老齢年金の年額84万円×0.7%×12カ月=7万560円が増額します。5年間、70歳まで繰り下げると、老齢基礎年金・老齢厚生年金の増額分は35万2800円(7万560円×5年間)になります。

さらに、厚生年金に加入して働き続けることにより、老齢厚生年金は増額します。65歳以降に月額65万円で厚生年金に加入して働くと、「在職定時改定」という制度があり、毎年10月に再計算され老齢厚生年金は増額することになります。

月額65万円の報酬なら、1年間で4万2751円、老齢厚生年金が増額することになります。
65万円×5.481/1000×12カ月=4万2751円

厚生年金に加入して70歳まで働くのであれば、4万2751円×5年分で21万3755円、もらえる老齢厚生年金が増額することになります。

70歳までの繰り下げによる増額分と65歳以降70歳までの定時改定増額分の合計は……
35万2800円+21万3755円=56万6555円

ただし、この設定では、高収入のため配偶者がいるともらえる加給年金は全額支給停止になります。もらえない加給年金は3年間分で124万8000円になります。

つまり増額する年金額よりも、もらえない加給年金額のほうが多いということになります。

夫が65歳で退職して、70歳まで老齢基礎年金のみ繰り下げたほうが年金額は多くなる

もし、加給年金をもらいたいのであれば、夫が65歳で退職して、厚生年金に加入しない働き方(業務委託など)で働くことになります。このとき老齢厚生年金は65歳から受け取り、老齢基礎年金のみ70歳まで繰り下げをするとします。老齢基礎年金のみ5年間の繰り下げをすると、老齢基礎年金は6万円×12カ月×0.7%×60カ月=繰り下げ増額分は5年間(60カ月)で30万2400円となります。この場合、さらに加給年金の3年分124万8000円は支給されます。
 
この仮の計算では、65歳で退職し、70歳まで老齢基礎年金のみ繰り下げ受給したほうが、もらえる年金額は多いです。ただし年金額の内訳やそれぞれの働き方の報酬額、夫がどのくらい長生きするか、加給年金がもらえる配偶者や子どもがいるかによっても、損得は大きく異なるでしょう。

年金事務所で在職しながら繰り下げ受給する場合、退職して繰り下げ受給する場合の年金額などを比較してみてはいかがでしょうか?

※年金プチ相談コーナーに取り上げてほしい質問がある人はこちらから応募するか、コメント欄への書き込みをお願いします。

 

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