資産運用

富裕層は保険や資産をどうしている?勤務医のお金事情

富裕層向けの資産運用・保険提案は一般層とは全く違います。勤務医はお金に無頓着な方が多く、適切なコンサルティングが不可欠です。勤務医の方の資産運用は、インフレ・デフレ対策として通貨分散・期間分散がカギになります。

松本 健太

執筆者:松本 健太

富裕層のお金ガイド

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一般的に、年収層として最も多い層(年収300万~600万円ほどの層)と、富裕層~プチ富裕層(年収3000万円以上や、資産1億円以上など)の方の資産運用等における設計は全く異なります。しかし、SNSやインターネット上には人口の多い層の情報があふれており、富裕層の方々がそうした情報に引っ張られ、資産運用・資産形成を誤ってしまう例が多いように、IFA(資産アドバイザー)として富裕層を顧客に持つ筆者は実感しています。

では、富裕層はどのように自らの資産を守っていけばいいのでしょうか。

今回は富裕層の中でも数が多く、関心の高い方が多い医師、とりわけ勤務医がどのように資産運用をしているのか、実態や特徴を明らかにしながら、どのような保険や資産形成が必要なのかについての記事になります。
病院

勤務医はどうやってお金を管理して使っている?

勤務医のお金事情:給与はどれくらい?

勤務医の先生は、後期研修医(※)となる3年目以降は一般的には年収が世間に比べて非常に高くなり、1000万~3000万円ほどとなることが多いです。大学病院や公立病院勤務の場合は常勤の年収が低い(と言っても最低でも400万~500万円程度、かつ地域差が大きい)場合がありますが、外勤(アルバイト)で時給1万円以上を稼ぐため、週に1度の外勤で一般の会社員くらいの収入を稼げてしまう、なんとも羨ましい職業です。医学部人気が上がるのも当然と言えます。

※後期研修医……専攻医ともいう。医師国家試験合格後の2年間、研修医(初期研修医)として臨床研修を受けた上で、専門分野について働きながら学ぶ約3~5年目の医師のこと

収入は診療科によっても大きく異なり、美容外科や眼科・麻酔科等は高く、忙しく外勤のしづらい外科系が低い傾向があると思います(これは勝手な肌感覚ですので「違う!」という意見も多いかと思いますが)。

勤務医のお金事情:どうやってお金を管理して使っている?

若くても非常に収入が高い上に、忙しくて使う暇がないため、銀行預金に貯め込んでいるパターンがとても多い傾向にあります。そしてお金に苦労した方が少ないからか、お金に対して無頓着、関心がないという方も散見されます。非常に頭が良い方々なのに、せっかく稼いだお金をそのまま銀行に入れっぱなしにしていて、昨今のインフレで目減りしている(そしてそれにも気づいていない)のは、なんとも不思議と言いますか、金融教育の弱い日本的だなという感想です。

看護師や医師同士でご結婚されるケースも多く、生活水準も高くなりがちです。IFAとして保険や資産形成の提案をする際、細かいライフプランシミュレーションを用いて必要保障額を提案する必要があります。当然ながら生活水準が高いと、計算上大きめの死亡保障が必要になりますが、その方に必要な保障がないままで、「万が一のことが今までに起きていたら危なかった」という勤務医の方も珍しくありません。

しっかりしたコンサルティングを受けていない方も本当に多いです(これはほかの富裕層にも言えることですが、年収や資産に目がくらんで大きな手数料を取りにいくことが目的になってしまう低レベルな保険募集人が少なからず存在することが原因ではないかと、私は愚考しています)。

さらに投資用不動産の営業の対象になることが頻繁にあるようです……。良い物件であればいいのですが、明らかに「生きているうちにリカバリーは絶対に無理だよね!?」というような謎の物件を盲目的に買い、その瞬間から損をしている勤務医も多いです(病院に電話がかかってくるようです)。

このように勤務医の方は収入や資産も多いがゆえに、本来であれば資産形成についてアドバイスしてくれるまともなコンサルタントが必要な方々だと思われます。医師なのでもちろん非常に賢い方が多いのですが、餅は餅屋ですので優秀な保険担当やお金のコンサルタントに相談するほうが、結果的にはうまくいくことが多いと思います。

勤務医の資産形成・保険の必要性

そもそもなぜ銀行預金だけではダメで、資産形成が必要なのでしょうか?

2024年8月現在、米ドルと円の為替レートは1ドル約145~150円を推移しています。7月は160円台でしたが、日銀の利上げによって大きく変動しました。以前は1ドル80円台の時期もありましたし、その後長く1ドル100~120円ほどのレンジを推移していました。

現在物価が上昇していますが、これは為替レートが動いて1円の価値が変化しているため至極当然と言えるでしょう。

お金に無頓着な医師の方々は、数千万円を銀行預金に貯金しっぱなしで、物価の上昇によってその貯蓄の価値が下がっていることに気づいていないケースが多く、損をしています。

「その3000万円で10年前はあのマンションを買えたけど、今は買えませんよ!」ということです。額面は変わっていなくても、同じものが買えなくなっているのであれば価値が目減りしています。今まで生きてきた時代が物価の変動が小さかっただけで、歴史を見ると通貨の価値は大きく変動を続けるものなのです。基本的には、健全な経済は緩やかにインフレしていくものです。

これは医師に限った話ではないですが、インフレ・デフレ(要するに、通貨の価値の変動)対策をするのであれば、NISAや外貨・変額等の貯蓄型の保険で、商品や通貨分散・期間分散をしながら長期的に資産形成をしていくことがセオリーです。

可処分所得にもよりますが、比較的余裕のある医師の方はNISAは5万~20万円の多めの月額で運用を始めましょう。また保険については、外貨建て保険や変額保険で通貨と期間の分散をしながら、長期的な資産形成の感覚も持ち、万が一の場合に支払われる保険金を適切に確保していきましょう。独身でも、必ず必要になる将来を見据えて保険は加入しておくほうが良いと思います。

また近い将来開業したい場合は、すべてを投資に入れずに「短期的に使っていける資産」を確保する意識するも大事です。保険は長期的に形成する資産ですので開業資金の貯蓄には適さず、NISAは崩すともったいないので、その分だけは現預金等で持っておくことも考慮しましょう。

ただ、NISAは利益分は税金がかからないので開業資金に一部使うこともアリだと思います。医師にとっての開業は、開業そのものが利回りの高い投資であると言えるため、資産を入れ替えるイメージであればNISAを崩して開業資金に充てても「もったいない」とは言い切れません。ただし、投資である以上暴落の危険もあるため、いろいろな可能性を考慮して積み立てていくことが大事です。

勤務医が資産形成の相談をするときに気をつけたいこと

富裕層、勤務医の方は資産形成に関するコンサルタントが必要だとお伝えしましたが、勤務医の中でも特に開業したいと考えている医師であれば、あらかじめ資産運用や保険について実際に考えるべきことが非常に多く、税理士や会計事務所との連携も大事です。実務に長けた適切なコンサルタントに相談されることをおすすめいたします。

コンサルタント選びについては「どういった人間を担当とするか」の運次第ではあります。コンサルタントによって資産運用や保険を提案する内容の差は大きいためです。しかし、実際には顧客目線ではない営業を受けてしまうケースが多いと思われます。本来はそれぞれの資産状況や職業に合った資産形成や保険のコンサルティングが必要になりますが、現状富裕層に強い、本当の意味で経験豊富なコンサルタントが非常に少ない(というより、ほとんどいない)ということを感じています。

医師をはじめとした富裕層の方に関しては、コンサルタントをしっかり選別されること(手数料の高い金融商品や保険を中心に提案されていないか、1つの保険会社しか売れない営業パーソンではないか、等々……)を強くお勧めいたします。

今回は富裕層の中でも勤務医の資産形成についてお伝えしてきましたが、一言に富裕層といっても「法人経営者層」「最高給与水準企業(大手商社等)の会社員」「専門職(弁護士やパイロット等)」「一流スポーツ選手」などでも資産形成の考え方は異なります。また医師でも勤務医と開業医でも異なります。私はIFAとしての保険や資産形成の提案の専門家であり、多くの顧客の状況を見てきました。今後の記事では、これらの富裕層の方の資産形成について、説明していこうと思います。
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