記事の内容は、関東圏を中心に展開するフォトスタジオが、父の日に父と娘がドレスアップして記念写真を撮るというもの。別にウエディングドレス風でなくてもかまわないのだが、実際に取材された父娘は、幼い娘が「まるで小さな花嫁さんのよう」だと記されている。これはあくまで取材者側の印象。娘が「パパのお嫁さんになりたい」と言った事実はなさそうだ。
実父、あるいは継父による娘への性加害事件はたびたび耳にする。「パパのお嫁さん」は、昔は微笑ましい言葉だったかもしれないが、今は聞いただけで「うわっ」と思いがち。
時代が変わったのである。
父親からの性的発言を思い出し「ぞっとした」
このキャッチコピーと幼い娘のドレス姿の写真に「ぞっとした」と言うのは、タエコさん(32歳)だ。「私は小さいころは父が好きだったんです。でも初潮があったとき、なぜか母が父にそれを伝えてしまい、父がニヤニヤしながら『おめでとう』と言った。それがすごく気持ち悪かった。父が私を『女』として見たと本能的に感じたんだと思う。それ以来、父を避けるようになりました」
だが鈍感な父親はそんなことに気づかない。今まで通り、かわいい娘をからかうようなことを言ったり、通りすがりにさらっとお尻を触ったりした。
「本気で嫌だったのに、父も母も気づいてくれない。高校生になったころ、父が私をしみじみと見て『だんだん女っぽくなってきて気持ちが悪い』と言ったんですよ。それはトラウマになるくらい傷つきました」
自分でも「女」という意識をどう持ったらいいのかわからない10代半ばの女の子は些細なことでも傷つきやすい。
「気持ち悪い発言」で父娘の関係性は悪化した
もちろん一方で、父との距離がもっと近く、何を言われても言い返す娘もいるから、タエコさんの父親が特別おかしいわけではない。タエコさんの反応がおかしいわけでもない。ただ、どこかで父娘の歯車がかみ合わなくなったのか、もともと相性が悪かったのか。そう考えるしかないだろう。「高校生のころは父とは、ほとんど口をききませんでした。大学進学のときも父には相談もしなかった。自分が行きたいところを受験しただけ。合格したときは報告だけしました。すると父が『よく頑張ってたもんな。おめでとう』としみじみ言ったんです」
少し関係が変わりそうではあったが、結局、彼女は父とはあまり話をしないまま大学を卒業、希望する企業に就職した。
「それを機に独立して親とは別に住んでいますが、今でも父親とはあまり話したくないですね。父はあの頃、自分が何を言ったかなんて覚えてないでしょうけど」
だからこそ、今回の「父のお嫁さん」には、「我ながら過剰反応してしまいました」と苦笑する。
>「こんな時代だからこそ」配慮する父親も