度を超えて「ハマる」ことの是非
「僕は妻が何かにハマることをダメだと言っているわけじゃないんです。妻もひとりの人間ですから、好きなことをする権利はある。それはわかっていますが、度を超えるとそうも言っていられなくなるんですよね」困惑したようにそう言うのは、リョウタさん(43歳)だ。結婚して10年経つ同い年の妻との間には8歳と5歳の子がいる。
「ずっと共働きをするつもりでの職場結婚ですから、会社から15分圏内に新居を構えて二人三脚で頑張ってきました。お互いに友だちも大事にしたいから、飲み会も回数は均等にしていた。先月は僕が1回多かったから、今月はきみが多くしていいよというように譲り合いもしていた」
それでもどうにもならないときはリョウタさんの母が手伝ってくれたが、妻も「なるべくお母さんに負担をかけないようにしたい」と言っていた。
それなのに何かが変わってしまったのは昨年秋のこと。
「妻は以前から少し太ったことを気にしていました。もともと細めだったから、今くらいがちょうどいいよと言っていたんだけど、本人は僕が思っているより気にしていたんでしょう。家から自転車で10分くらいいったところにスポーツジムができたのを機に、体験に行ってみたらおもしろそうだっただから入会すると。時間的にも体力的にもきつくなるから無理しないようにね、とは言いました」
趣味にハマり、日常生活に支障が……
妻はそれから時間をやりくりして通うようになった。最初はヨガがおもしろいとか、水泳も気持ちいいとか言っていたのだが、1カ月もしないうちに筋トレにハマったと言い出した。「別に何をやろうが本人が楽しいならそれでいいんですが、日に日に妻は筋肉を作ること自体にはまっていきました」
ある日、家に帰ると食事がなかった。その日は妻が作る日だったのだが、妻は「ジムに行ってきます」とだけメモを残していた。いつもならLINEで連絡が来るのにと不思議だったとリョウタさんは言う。
「それ以上に、子どもたちだけで夜を過ごさせるなんてと腹が立ちました。子どもたちはもう寝ていたから、寝かしつけてからジムに行ったんでしょうけど、万が一、何かあったらどうするんだろうと思った。たとえば大きな地震とかね。子どもは怖がりますから、せめてどちらかがいてやらないと……」
上の子がたまたま起きてきたので、夕飯はどうしたのかと聞くと「お母さんが買ってきたお弁当を食べた」と。たまにはいいけど、なんだかなとリョウタさんは嫌な予感がした。
>「自分の時間を大切にしたい」と妻は言うけれど