男子バレーの好調と「チームワーク」の関係
そもそも日本のチームスポーツには、どうしても中学生時代からはびこる「先輩・後輩の上下関係」が、たとえプロになってもつきまとう。アメリカのNBA(プロバスケットボールリーグ)では、選手がヘッドコーチのファーストネームを呼ぶことがごく普通で、マイケル・ジョーダンも「フィル!」とコーチを呼んでいたものだった。
役職を超えて、人と人が信頼関係を結ぼうとする習慣があるように思える。○○先輩、○○部長、と学生時代から社会人に至るまで「役職」で呼ぶ日本では、どうしても上下関係が横行してしまうのだろう。
そんな中、今の男子バレー代表は、キャプテンが後輩たちに「いじられ」ている。後輩たちは、キャプテン石川祐希選手の髪型がヘンだの、卵かけごはんの食べ方がヘンだのと言いたい放題だ。もちろん、罪のない範囲の冗談だし、何より彼らはわかっている。そうやってキャプテンが「いじられ役」を務めてくれていることを。だからことのほか、過去に類を見ないほどのチームワークのよさが報じられている。
上下関係。日本のすべての組織が、もう一度見つめ直したほうがいいポイントかもしれない。
日本企業が体育会系の人材を好む理由
子どもの頃から「上の人には逆らってはいけない」という倫理観が横行する日本。言いたいことが言えない状況が作られていき、爆発する人、こもる人など、人は逃げ道を探して右往左往する。「私も中学時代から本格的にチームスポーツをやっていて、先輩には絶対服従でした。日本の企業は、そういう学生ほど雇いたがりますよね。会社や上司の言いなりに動いてくれる“いい駒”ですから。私自身も、そうやって使われる人間になるんだと少し諦めみたいな気持ちがあったんです」
そう言うのはリナさん(36歳)だ。彼女が配属された部署は、今までの上下関係の経験が生きる場所だった。先輩にかわいがられ、上司の意図より半歩先をいく。そうやってリナさんは自分の居場所を作った。だが、5年ほど経つうちに心がくすぶっていった。本当はもっと仕事を任せてもらいたい、自分のアイデアを生かしたいと思っていても、それを言えない。
>会社の「いい駒」であることに疲れて……