結婚という「王道」から外れる生き方
「私はもともと結婚願望などほとんどなかったんですが、わが家はなぜか両親も姉も結婚するのが一番という考え方でした。だから実家にいるときはつらかったですね」そう言うのはアキコさん(38歳)だ。大学進学を機に上京し、これで自由だと思ったのもつかの間、30歳を前に学生時代の友人たちがバタバタと結婚していった。
「2歳違いの姉は26歳で結婚して子どもがふたりいて、いつも幸せとつぶやいていたし、結婚していった友人たちも幸せそうに見えた。でも私はいつも、“幸せ”そのものがどういう状態なのかがわからなかったんです。他人の目から見た“幸せ”なんて意味がないし、私自身、幸せという状態がわからない以上、求めてもいないわけだし……」
学生時代も社会人になってからも恋愛はした。だがのめり込むことはなかった。常にアキコさんは自分自身のための時間を優先させた。彼のために「待つ」などはまっぴらだと思っていた。
「社会人になってから、新たな目標ができたんです。資格をとってスキルアップし、30歳のときに満を持して転職しました。さらに上を目指して頑張ってきた。私には仕事がいちばんおもしろかったし、もっといえば今後、起業も考えています。そのためにも時間を無駄にはできない」
誰かのためではなく、自分だけのために時間と労力を使う。そしていつか社会に自分の時間やスキルを還元したい。彼女はそう思っているという。
「幸せ」な姉の結婚生活が破綻
「実は5年前に、姉が離婚したんですよ。あんなに幸せだと言い切っていたのに、信じていた夫に別に好きな人ができたんだそう。しかも彼の言い分がすごいんです。『きみはいい奥さんだったかもしれないけど、人生を一緒に歩んでいくにはつまらなかった』って。名言だと思ってしまった……。姉はいい母、いい妻でありたかったんでしょう。それはそれでいいんですが、姉の夫はそういうものを求めていなかった。姉は『私は女としてあんたより上等、結婚くらいしてみなさいよ』としょっちゅう言ってた。そこに唯一の価値があると思っていた。だから離婚後は悲惨でしたよ」
子どもを連れて実家に戻り、親のすねをかじりながらの生活をしていた。さすがの両親もこのままではいけないと思ったのだろう。姉は仕事を探すことになったが、なかなか見つからなかったという。
>幸せのあり方は多様である