息子の“生々しい”言い方に怯んだ私
息子夫婦に居場所を奪われ、物置部屋での生活を余儀なくされる
「抗議したんですよ、この部屋は物置にしようと思っていると。すると息子が『2階の僕らの寝室の隣でおかあさんが寝るわけ?』って。妙に生々しい言い方だったので、私も怯んでしまって。じゃあ、いいわよ、物置でと言うと、嫁が『お義母さん、そこは寝るだけにしてリビングを好きなように使ってくださいよ』って。
いや、もともとあんたたちが居候するわけでしょと言いたかったけど角が立つし。そうこうしているうちに、息子が『家の名義がまだお父さんになっている。変更したほうがいい』と言いだして。結局、息子の名義になりました。夫の退職金の一部でようやくローンが完済した家なのに、あっけなく息子の名義になってしまった」
60代で孫育てを強いられ、嫁からまさかの言葉
乗っ取られた感じがした。息子の意図ではなく、嫁の意図だとケイコさんは思った。その後、今度は女の子が生まれた。嫁は育休もろくにとらずに仕事に復帰、平然と残業までしてくるようになった。「3歳とゼロ歳児を抱えて、家事に育児にと大変な日々でした。どうして60歳になる私がこんな目にあわなければいけないのか……。息子に『もう無理だから保育園に入れて』と言うと、なかなか入れないんだよって。嫁は涙目になって、お義母さんごめんなさいと言うんです。演技がうまいんですよ」
無理がたたり、ケイコさんは昨年、体調を崩して入院した。さらに股関節の手術に踏み切った。
「ずっと痛かったから医師と相談して手術しました。決まってから息子たちには言ったんですが、ふたりとも青ざめてましたね。『家政婦と子守が入院しちゃうから大変だけど、頑張ってね。あなたたちが親なんだから』と嫌味を言ってやりました」
手術に向かうとき、ケイコさんはひとりぼっちだった。息子夫婦はそれぞれ仕事が休めないというのだ。別にいいけどと言ったが、ひとりで手術室に向かいながら、これならひとり暮らしでも同じだわと思ったそうだ。
「手術が終わってしばらくたってから息子夫婦が来たみたい。まだ麻酔が効いていたから頭がぼうっとしていたんですが、会話は聞こえました。嫁が『寂しいだろうと思って同居してあげたのにね。それに入院なんかして、使えないわね、あなたのお母さん』と言ったんですよ。息子は『そう言うなよ』となだめていましたが、私はあの言葉は忘れない。私が同居させてやったから経済的に楽になったはずなのに、恩も感じていないなんて」
子世代は「同居してあげた」と思い、親は「同居させてやった」と考えている。お互いに相手に恩を着せている状態では、うまくいくはずもない。そのあたりは話し合って解決できる問題ではないのかもしれないが。
この春から孫たちが保育園に入園し、ようやくケイコさんも時間的に少し余裕ができた。だが、まだ友人と時間を気にせず会ったり旅行したりすることはできずにいる。家族と暮らすというのは、自由を奪われるということなのか。自分の時間がほしい、自由がほしい。ケイコさんは日々そう思いながら、ストレスを抱えているという。