お金の苦労をさせたくなかった
ひとり親の平均年収は、母が272万、父が518万円だという。この格差が母子世帯の生活をより苦しいものにしている。
「私は子どもたちにお金がないからやりたいことができないと思わせたくなかった。だけど私が稼ぐためには朝から晩まで働くしかない。その結果、子どもたちのメンタルまでケアできなかった。コミュニケーションをとっていると思っていたのは、私のひとりよがりだったんでしょう」
もちろん、夫婦がそろった家庭でも親子がうまくいかないことはよくある。ひとり親だから子どもたちへのケアが足りないと自分を責める必要はないはずなのだが、「それはわかっていているけど」とスミコさんの表情が曇る。
「中学に通えなくなった娘には、息子がときどき言葉をかけてくれています。息子とは少し話していますが、学校に行かない理由は言わない。私とは話そうとしないので、娘はもちろん私に不満があるんでしょう。一生懸命やってもうまくいくとは限らない。私の選択が子どもたちに悪影響を与えているとしたら、耐えられないものがあります」
不登校になった娘に「恨まれているだろう」
世の中のシングルマザーの多くが、スミコさんと同じような気持ちを抱えながら生きている。子どもたちを育てるために頑張っているのだ。過去にとらわれるより、先を見すえなければと彼女もわかってはいる。
「今後は勉強して仕事のスキルアップを図って少しでも収入を増やしたいですね。今までは無我夢中だったけど、ここらへんで人生を見直してみたい。どういう状況であっても人生、思い通りにならないのはわかっていますが、娘には恨まれているんだろうなと思う」
それでもいつかきっと「頑張ったお母さん」のことは理解してくれるよと息子は励ましてくれる。
離婚した夫は家族には執着がなかったようで、子どもたちに会いたいと1度も連絡してきたことはない。スミコさんの苦労はまだまだ続いていくのだろう。
※参考:「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」(こども家庭庁)