夫が浮気相手と“絡む写真”を撮る気持ち悪さ
夫が浮気している。しかも夫自身が相手との絡みを写真に撮ってもっているという気持ち悪さを、イズミさんはなるべく考えないようにしていた。あの写真はやはり、夫ではなかったのかもしれないと思うようにさえしていた。「ベッドカバーを替えるときは二重にマスクをしました。だけどそのうち、夫の洗濯物を触れなくなったのでゴム手袋をして。夫が使った食器は、私と娘の分が終わってから別に食洗機に入れました。特に夫が使ったタオルなどはもう、手に取る前から臭いんですよ……。でも淡々と処理しています」
つらいとか、夫への自分の気持ちはどうなっているのだろうかなどと考えるのもやめたとイズミさんは言う。だからといって夫と会話がないわけでもない。そこが夫婦の不思議なところだ。
「一定の距離感をもっていれば大丈夫です。たとえばリビングのソファで離れて座って話す分には大丈夫。だけどダイニングテーブルがわりと小さいので、距離が近くなる。そうなるとつらいですね」
夫の息、汗、唾液は「生々しく」吐き気
このゴールデンウィークの前半、一家で近場に旅行した。3人であちこち散策して歩いていたとき、夫の着ているTシャツに汗がにじんでいるのを見て、イズミさんは思わず吐き気を覚えた。「生々しいのがダメなんですね、きっと。夫の呼気がかかりそうだとか、汗が見えるとか、食べるときに使う食器や箸からは唾液を感じさせるとか。夫がかっちりしたスーツをきちんと着て汗ひとつかいていなければ、隣に立つことはできる。でも汗ばんだ手で夫が触れたものに、私は触ることはできない」
それでも最近は慣れてきたので危ない状況を避けることができ、吐き気を覚えずに夫に接することができるようになった。
「夫は私が写真を見たことに気づいているのかもしれません。ときどき何か言いかけることがあるんですが、私が言わせないようにしているのが現状。私は本当にもめごとがいやで、だったら何も言わないほうがいいやと思うんです。離婚する気があるなら揉めてもいいけど、私は今のところ離婚したら経済的に困るからする気はない。娘から見て、仲のいい両親でありたい気持ちも強いんです。だったら今は、何もなかったこととして生活していくのがいちばんいい。そう思っています」
何が正解かはわからない。10年後に、この選択がよかったと思えるかもしれないし、別の方法があったと後悔するかもしれない。それでも、今、最良だと思える決断を積み重ねていくしかない。
「今は今。5年後は5年後。計画性がないかもしれないけど、娘の成長に合わせて私の判断も変わってくるような気はしています」