夫への嫌悪感を封じ込めた結果
「今は少し落ち着きましたが、当初はこんなものはたいしたことではないと思ったし、何より夫と揉めたくなかった」
イズミさん(44歳)はそう言って少しだけ苦笑した。結婚15年、6歳年上の夫との間に13歳のひとり娘がいる。
「夫は仕事熱心で子煩悩。娘を心からかわいがっている。27歳のとき夫と異業種交流会で知り合ったんですが、職種が似ていたので仕事の話をしたときに、こんなふうに仕事に取り組む人がいるのかと心から尊敬の念を抱いたんです。それがきっかけで、私のほうから好きになり、猛アプローチをしてデートするようになりました」
当時、彼には恋人がいたらしいが、イズミさんが強烈に迫ったことで彼は恋人とは別れたとあとで知った。
「当時は夫を射止めたことでうれしくてたまらなかった。そこから交際、結婚と順調にきて、娘にも恵まれ、私は幸せだといつも思っていたんです」
夫の匂いで「吐きそうになった」
ところが1年前のある日、彼女は夫のベッドのシーツや枕カバーを取り替えながら、突然、吐きそうになった。慣れ親しんだはずの夫の匂いに反応したのだ。
「夫の加齢臭がひどくなったんだと思いました。うちはコロナ禍をきっかけに寝室を別にしたんです。当然、性的な関係もずっとなくて……。でも私自身がそういうことはあまり好きではなかったから、ホッとしてもいました。夫も特に誘ってはこなかったし」
だが夫の寝室を掃除したとき、少しだけ開いていた机の引き出しから女性と夫が絡んでいる写真が見えた。男の顔がはっきり映っていなかったので、単なるエロ写真だと思ったのだが、男性の背中に大きめのほくろがあった。夫と同じ位置だ。どう見ても夫だった。
「なにこれ、と思った瞬間、全身が総毛立つほど気持ちが悪くなった。嫉妬とかそういう話ではなく、ただ気持ちが悪かったんです」
夫に言うべきだろうかとイズミさんは悩んだ。夫と揉めるのは面倒だというセンサーが激しく働き、彼女は何も言わないことを選択した。
「だけどそのあと、夫の部屋に入ると軽く吐き気がするようになり、ベッドカバーなどを取り替えるときは本気で気持ちが悪くなるようになったんです」
明らかに「夫への嫌悪」だろう。心理的に封じ込めても、体は正直に反応した。
>夫の“行為”が気持ち悪くて……