初日はともかく、「石の上にも3年」という言葉は、就職に関しては今は昔の話。ブラック企業だとわかればすぐ逃げろ、心身を壊してまでやる仕事はないというのが定説だ。
配属後1カ月で離職した24歳女性の場合
昨年春、就職したものの4カ月で離職したというエツコさん(24歳)。最初の3カ月は研修期間で、同期と苦労をともにしたこの時期は有意義だったと感じているそうだ。「ところが配属先が、私の希望とまったく違っていて、しかも顔を合わせた上司の最初の一言が『すぐにでも戦力になってほしい』というもの。これ、新入社員にはプレッシャーでしかない。その上司に『なぜ私がこの部署だったんでしょう』と聞いたら、『使えそうだったから』って。戦力だの使うだの、まあ、結局、会社員はただの“駒”ですよね。わかってはいるけど言いようがあるんじゃないのと思いました」
配属初日から上司に不信感を抱いてしまったエツコさん。実際に仕事を教えてくれた指導社員は、彼女のプレッシャーを和らげようとしたのだろう。「まあ、慣れれば誰にでもできる仕事だし、言われたとおりにやっていれば大丈夫だから」と適当なことを言った。
「当時は私も神経過敏になっていましたから、誰にでもできる仕事なら私でなくてもいいじゃんと思ったし、上司の言葉と合わせて、使える駒で誰にでもできる仕事を早くやってくれる人材がほしかったんだと理解しました」
最初に与えられた仕事は確かに簡単で、彼女はすぐに次のステップへと進んだ。指導社員は「無理しなくていいから」「頑張りすぎないで」と言うが、それは自分を無能だと思っているのかとエツコさんを傷つけた。
「君は使える」「オレが鍛えてやる」は嫌
「そして1カ月ほどたったころ、例の上司に『君は本当に使える。オレが思い切り鍛えてやるから頑張ってほしい』と言われて退職しました。上司個人に鍛えられるなんて嫌でしたから。1カ月、部署内を観察していると、みんながその上司の言いなりという雰囲気で、通常の社員にはほとんどやる気が感じられない。というか部署内が暗いんですよ。まとまりもないし、やりがいを感じさせる出来事もない。すぐに退職届を出しました」
研修期間に学んだことは大きかったから、いい会社だったとは感じている。ただ、配属先が悪すぎた。自分には合わなかったのだ。サラリーマンで楽したいわけではなかった。自分でなければできない仕事を、一生かけてやっていきたかった。
「やりがい搾取なんて言われるけど、そのやりがいさえ私にはなかった」
半年後、彼女は今の中堅企業に再就職。収入は減ったが、チーム単位で上司と部下の明確な区別もなく、言いたいことが言える環境に満足している。
>新卒1年足らずで退職、後悔もした