代々続く資産家に嫁ぎ、夫からは「平手打ち」
「若くして結婚、相手の家に入りましたが、ひどく古い価値観の家だったんです。嫁は誰より早く起きて働き、誰よりも遅く休むのが当たり前という家で……」そう言うのはアケミさん(50歳)だ。いつの話かと思うほどだが、ほんの30年ばかり前のことだ。地方の小さな町で産まれ育った彼女は、21歳のときに5歳年上の同じ町の男性と結婚した。彼の実家は代々続く土地持ちで、親子で手がけている不動産業はかなり儲かっていたようだ。
「舅姑と夫の弟と妹、さらに私たちの子どもがふたり。一時期は8人家族で暮らしていました。三食の用意と家事、義弟や義妹からの頼まれ事など、家に関わるすべてを私がやっていた。それでいて子どもがぐずると夫に平手打ちされたり、うっかり頼まれたことを忘れると舅からもぶたれました。男は暴力をふるっていいと思っている家だった。舅はよく夫に『嫁は叩かないと育たない』と言っていた。おそらく姑もやられていたんでしょう」
女の子を産むと「なんのための嫁か」と言われ
第一子が女の子だったため、姑には嫌味も言われた。「なんのための嫁なんだか」と。結婚するまでは優しかった夫だが、結婚後も風俗に行ったり浮気したりは日常茶飯事。文句を言おうものなら、「おまえは正妻なんだから気にする必要はないの」と抑えつけられた。「第二子が男の子だとわかってホッとしたとき、私もこの家に毒されていると思った。そのとき、いつか子どもを連れて出て行きたいと考えるようになりました」
第一子のときも第二子のときも、アケミさんは産後、退院してからすぐ家事育児に翻弄されていた。体調が回復するまでの時期は人によって違うが、昔から「お床上げ」は3週間といわれている。産後、せめて1カ月は無理しないことが大事だが、姑は「家事くらいできるはず」と言いきった。
「第二子のときのほうが辛かったですね。退院して2週間後に夫が迫ってきたときは、さすがに夫を突き飛ばしました。そんな気になれるはずもない。夫は怒って『出て行け』と言いました」
絶望したアケミさんだが、生まれたばかりの子を外に出すわけにもいかない。
>婚家を追い出された「恥さらし」扱い