「パワハラで苦しんだ」と言っておきながら
「職場の先輩女性なんですが、一見、親切なんです。私が転職してきたときも、何か聞けばすごく優しく答えてくれた。だからてっきりいい人だと信じていたんです」マキさん(33歳)は、2年前に今の会社に転職してきた。同業他社にいたので、仕事の大きな流れはわかっているが、その会社、その職場ならではの習慣に早く馴染もうと思っていたとき、10歳ほど先輩のエミコさんが親切にしてくれた。
「親しくなったころ、エミコさんが『私も転職してきたの。前の職場のパワハラでひどい目に遭って』という話をしてくれて……。私はパワハラと認識するような目には遭ってなかったので、彼女は大変だったんだなと深く同情しました。ただ、今の職場にはそういうのがないから安心してと彼女に言われてホッとしていました」
ところが半年ほど経って、マキさんが取引先との交渉に悩んでエミコさんに相談すると、彼女は非常に冷たい口調で言った。
「そこの会社は、もううちとは取り引きさせませんよと言えばすぐに折れてくるわよって。それって外部業者に対するパワハラそのものじゃないですか。交渉なんだから対等の立場でテーブルにつかないといけないんじゃないですかと言ったら、『あなたは甘い』って。この人、実は怖い人なのかもと感じました」
先輩の行動を観察していて気づいた本性
その後、客観的に観察していると、エミコさんは自分より立場が上の人にはにこやかに、どちらかといえばへつらうように接している。だが後輩に対しては、顔は笑っているが「ねえ、どうしてこれができないの?」と小声でネチネチつぶやいているのを何度か見かけた。その後輩に「あんなこと言われて大丈夫?」と聞いてみると、「あの人はいつもああなんです。あれもパワハラだと思うけど、上層部は彼女をいい人だと思っているから聞く耳を持たないんですよ」と言われた。
パワハラで苦しんだ人がどうして……とマキさんは驚いたが、エミコさんの言動は大きなパワハラとは言えないとも気づいた。単なる嫌味や皮肉、彼女の個性とさえ思われがちなのかもしれない、上層部にとっては。
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