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PTAに入らないと不利益はある?非会員の子どものケガ・事故は“対象外”か? PTA保険Q&A

PTA活動中の事故やトラブルなどに備える「PTA保険」。PTA保険にまつわる疑問や、ありがちな誤解について解説します。

長島 ともこ

執筆者:長島 ともこ

子育て・PTA情報ガイド

PTA活動中の事故やトラブルなどに備える「PTA保険」

「PTA保険」という呼び名は通称で、正式名称は「PTA団体傷害保険」および「PTA賠償責任保険」という

「PTA保険」という呼び名は通称で、正式名称は「PTA団体傷害保険」および「PTA賠償責任保険」という

PTA活動において、意外と知られていないのが「PTA保険」。PTAには加入していても、PTA保険に入っているのか、加入している場合、補償はどのような内容かなどについて、正確に把握している保護者は少ないのではないでしょうか。

大手保険会社に勤務しながら、長年東京都八王子市の小・中学校でPTA会長やP連会長をつとめ、PTA保険にくわしい「一般社団法人Pop LifeWorks」代表理事の櫻井励造さんのコメントを交えながら、Q&A方式で解説します。
 

Q.そもそもPTA保険とはどんな保険? 補償内容は?

「PTA保険」という呼び名は通称で、正式名称は、「PTA団体傷害保険」および 「PTA賠償責任保険」。これら2つの保険で構成されていることが一般的ですが、どちらか一方のみ契約することも可能です。

「PTA団体傷害保険」は、
・児童生徒がPTA主催のイベントでケガをした
・PTA会員の保護者がPTA主催のソフトボール大会で骨折、入院した
・PTA役員の保護者が役員会に行く途中に交通事故にあった
などのときに、保険契約時に定められた補償金額が、お見舞金として対象者に支払われます(補償内容・補償金額はプランにより異なる)。

保険の対象者(被保険者)は
1. 児童生徒
2. PTA会員
3. PTA会員同居の親族
4. PTA行事への参加が事前に認められている人
が基本です。

また「PTA賠償責任保険」は、
・PTAスポーツ大会のときに借りたテントが、強風により壊れてしまった
・PTA総会で、学校から借りたマイクを落として壊してしまった
などのときに、保険契約時に定められた補償金額がPTAに支払われます(補償内容・補償金額はプランにより異なる) 。

保険の対象者(被保険者)は 、“PTA組織そのもの”が基本です。
 

Q.PTA保険はだれが・どのように加入するの? 加入は義務!?

PTA保険は、各校のPTA単位で加入します。自治体によっては、各校のPTAを束ねるPTA連合(以下、P連)がPTA保険を斡旋しており、事務代行者として介して加入するケースもあります。

加入手続きは各校のPTAにより異なりますが、まずPTA役員会で加入を決定させます(翌年以降は補償内容の改定などがなければ、役員会での報告レベルで継続)。そして、加入・継続申し込みをし、保険料支払い手続きという手順で行われます。補償内容については、年度はじめの総会お知らせなど、PTAから保護者あてのお便りといっしょに配布されるのが一般的です。

「PTA保険は1年ごとに継続するため、毎年補償内容を見直し、自校のPTA活動に応じて保険会社や契約内容を変更することも可能です。しかし、保険の約款や規定、補償内容が複雑なため、検討をせず毎年そのまま継続しているPTAが多いのが現状です」(櫻井さん、以下同)

多くのPTAでは、団体傷害保険と賠償責任保険の両方に加入していますが、そもそも加入は義務なのでしょうか。

「そもそもPTA保険の加入は義務ではありません。そのためPTA本部で必要ないと判断した場合は、契約を解約しても問題ないのです。ただ、PTA活動中に器物損壊などにより、法律上の賠償責任を負う可能性はゼロではありません。裁判にまで発展した場合の訴訟費用や弁護士報酬なども補償に含まれていることが多いため、PTAを守るためにはPTA賠償責任保険に加入しておくことが、安心につながると思います」
 

Q.P連経由でないと、PTA保険に加入できないの?

「自治体によっては、PTA保険の斡旋を行っていないP連もあります。八王子市の小・中学校のP連もそのひとつです。その場合は、各校のPTAがPTA保険を扱う保険会社と個別に契約します。またその多くは、保険代理店を介して契約しています」

なお、P連でPTA保険を斡旋している自治体でも、補償内容が自校のPTA活動とそぐわないと判断した場合は、個別に契約することも可能です。
 

Q.P連を退会したPTAは、P連が販売する保険加入はできなくなるの?

P連を退会したPTAは、P連が斡旋する保険に加入することを「不可」としている場合が多いです。そのためPTA単体として、PTA保険を扱う保険会社と契約する方法に変える必要があります。

また、P連を退会した学校のPTA向けにもPTA保険を斡旋する「一般社団法人 全国PTA連絡協議会」経由で契約する方法があります(全国PTA連絡協議会への無料会員登録が必要)。
 

Q.PTAを解散した場合でも、PTA保険に加入できるの?

PTAを解散し、「PTA」という名称ではなくなったとしても、保護者と教員が協力して児童生徒の教育環境の改善などを目的になんらかの活動を継続する場合は、 PTA保険に加入できることが多いです。
 

Q.PTA未加入の保護者の子どもは、PTA団体傷害保険の対象外?

PTAは、その学校に通う全ての子どもたちの健やかな成長を目的に活動する団体であり、支援対象は、その学校に通う全ての子どもたちです。

加入条件は保険会社によって異なりますが、多くの場合、PTA非会員の子どももPTA団体傷害保険の対象となります。
 

Q.PTA未加入の保護者は、PTA団体傷害保険の対象外?

PTA団体傷害保険の対象者はPTA会員であるため、「PTA未加入の保護者は、PTA保険対象外」と結論づけられがちですが、実際のところどうなのでしょう。

「保険会社の約款を読むと、『PTA会員』についての明確な定義づけがされていません。ですから、加入・非加入を問わず、全家庭、全児童生徒がPTA保険に加入しているPTAが存在するのも事実です。ただこれは、PTA団体傷害保険の対象者(被保険者)に含まれる“PTA行事への参加が事前に認められている人”に、PTA未加入の保護者を加える、という考え方。これについては、加入母体であるPTA本部での議論が必要です」
 

 Q.PTA保険の課題は、どんなところにあるのでしょうか。

PTA活動中に起こる思わぬ事故やトラブルに備えるためのPTA保険は、本来は、その加入の有無も含め、補償内容などについて各学校のPTAでしっかり議論するべきものです。

しかし、「約款や規定、補償内容が複雑、本部役員の中に保険にくわしい保護者がいないなどの理由から、おざなりにされがちで、前例踏襲的に加入を継続しているPTAが多く存在しているように見受けられます。近年、PTAは任意加入制への移行が全国的に進み、運営方法や活動内容が進化しつつありますが、PTA保険における対象者(被保険者)との整合性の課題がおきざりにされつつある印象を受けます。保険会社側も、この流れに追い付く必要があると思います」
 

Q.保険会社からP連に「団体事務手数料」という報酬が支払われる!?

P連経由でPTA保険に加入した場合、保険会社からP連に「団体事務手数料」という報酬が支払われるというのは本当なのでしょうか。

「P連は、『団体扱い』として一定数以上の対象者(被保険者)がいる場合に、保険料の割引を受けられたり、支払い手続きや書類のやりとりが発生することに対して『団体事務手数料』として手数料を受け取ったりすることができます。これは、P連が保険会社の募集事務の代行を行うことに対し、保険会社が支払う報酬として認められているもので、一般企業でも同様のことが行われています。しかし、実質的な“バックマージン”としてお金が入り、P連の活動資金となっていることについては否定的な意見もあります」

P連は、団体事務手数料の使途を明確に公開し、加入者に説明する責任があります。PTA保険は、お金がからむからこそ、透明性と説明責任が求められるものです。

また、加入する側が複数の保険会社から見積もりを取れるようにするなど、公平性の確保も不可欠なのではないでしょうか。PTA本部はもちろんのこと、保護者もPTA保険のあり方を理解しその内容を確認することが大切です。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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