娘の婚約者は「DV予備軍では?」
「娘の婚約者、私はDV予備軍だと思っているんですが、娘は聞く耳を持たない。『彼がエリートだから、おかあさん嫉妬してるんでしょ』なんて言う始末。夫まで『いい男じゃないか、何を言ってるんだ』と私の目が狂っているって。でも、私は自分のカンを信じているんですよ」サトエさん(58歳)はそう言う。29歳になるひとり娘がマッチングアプリで出会った男性と交際、結婚を決めたのだという。付き合って半年ほどしかたっていないこと、相手の男性が8歳年上のエリートで有名企業の幹部候補だと聞いてサトエさんは不安を覚えた。
「それまで恋愛に興味がなかったから結婚が遅くなったと彼は言っていると娘から聞きました。まあ、ともかく会ってみましょうと自宅に呼んだんです」
挨拶はしっかりしていたし、はきはきと答える感じもよかった。気楽に食べて行ってねとサトエさんが夕食を用意すると、それもおいしいと食べてくれた。
「ただ、茗荷と卵のお吸い物を出したら、彼は茗荷を知らなかった。これ、おいしいけど何ですかって。まあ、親が嫌いだから出さないということもありますが、聞けば『うちの母親はほとんど料理しなかったから』と。おかあさん、相当なキャリアウーマンでのちに起業したそうです。『母にしかできない仕事があったんだと思います。料理は誰でもできるけど』という言葉に私はちょっとカチンときましたが、彼は失礼なことを言っている気持ちはなかったみたい」
初対面の相手に上から目線な言動を連発
さらに、「でも彼女は専業主婦でもいいと思いますけど」と娘の将来に言及した。なんだか娘を下に見ているなと思ったものの、娘はムッとしてもいないようだ。「先のことはどうなるかわからないから、臨機応変に柔軟に話し合って一緒に生きていくのがいちばんいいわねと穏やかに言ったら、彼の眉がビクッと動いた。対等に話し合う気なんてないなと私は直感しました。はきはきした口調も、オラオラ系に思えてきて……。娘が何か言ったとき、彼がガチャッと音を立ててカップをテーブルに置いたんですよ。それが私には怖かった。でも娘はそんな彼を、リーダーシップがあって私を引っ張っていってくれるとメロメロなんですよね」
引っ張っていってくれる男は身勝手な男だよと言ったが、「私は優柔不断だからいいの」と流されてしまった。
「大反対とは言わないけど、もう少しだけ付き合ってから決めても遅くないと娘には言ってあります。彼の本性をよく見極めてほしい」
娘は友だちにも同じアドバイスをされたようで、あと半年くらいは付き合ってみると言いだした。その間にいろいろ気づいてほしいんですけどねとサトエさんは苦い表情で言った。