事実婚の夫が結婚してから保守的になる
「うちの夫も結婚してから急に保守的になりましたよ」そう言うのはサヤカさん(38歳)だ。4年前、2歳年下の彼と事実婚をした。ところが子どもができたとわかると、夫は急に「婚姻届を出そう」と言い出した。
「子どもができるのも想定した上での事実婚だったのに、妊娠したら『このままだと子どもがかわいそう』と言いだして。私は家と家との結びつきを重視するような結婚はどうしても嫌だった。夫もその考えに同意してくれていたのに……」
夫の両親もやってきて、「別に付き合わなくてもいい。ただ、子どものことを考えてあげて」と土下座せんばかりに頭を下げた。あげく、サヤカさんの両親にまで、「お父さんと子どもの姓が違っていたらかわいそうでしょ」と責められた。
「つわりがひどい時期にそんなことをされて、私、疲れちゃったんです。それでしかたなく婚姻届を出しました。きっとあとで後悔すると思いながらも、そうするしかなかった」
普通の結婚をしたら、夫はなぜか「普通の夫」になってしまった。サヤカさんに仕事を辞めたほうがいいのではないかと言い出し、せめて子どもが3歳になるまでは家にいてほしいとまで言ったのだ。
結婚生活は「男が損する」と思っている?
だがそんな夫の言うことを聞かず、彼女は育休を半年足らずで切り上げて仕事に復帰した。そして、いわゆる「嫁」としての従来のありようはすべて拒否した。「夫は夫で、家事はしようとしませんが、子どもだけはかわいいみたいでせっせとめんどうを見ています。そのうち家事もやってくれるといいけど、男が家事なんて……と言っていますね。結婚前には男女平等だとしきりに言っていたのに」
夫が保守的になったのは、結婚したら従来のありように則ったほうが楽だと思ったからだろうとサヤカさんは言う。
「旧来の思考で、旧来の制度に則っていれば誰にも何も言われませんから。今までの生き方を変えようとするのは大変です。でも私は諦めないつもり。いつか子どもに事実婚の話をして、夫には離婚届を突きつけて、事実婚に戻るか離婚するか決めさせようと思っています」
若い世代ほど、上の世代を見ていて、結婚すると男のほうが「損をする」と思っているのかもしれない。本当の意味で、男女が対等になるのはまだまだ先のことになりそうだ。